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【ひらめくスカート】今井俊介 スカートと風景 東京オペラシティアートギャラリー

東京オペラシティアートギャラリーについて
「アートギャラリー」と呼ばれているが、企画展示室に加えてコレクション展示室、更に新人アーティスト展示室もしっかりも備えており、一部都内公立美術館よりも設備が整っている良質な美術施設。コレクションの展示替えも会期ごとに行われ毎回テーマに沿ったキュレーションを楽しませてくれる。

上りの入り口は一方通行。帰りは別のルートです。


新宿界隈は大型美術施設が少なく、ここが唯一貴重な広さをもつ美術施設である。

企画展示室 


意外と年季の入った木の床



今井俊介氏の個展「スカートと風景」
初見は「平面構成」という言葉がパッと浮かび、受験期を思い出し一瞬暗い気分になった。溝引きガラス棒と極細筆、アクリルガッシュ、、、。

が、鮮やかな色彩とテキスタイルデザインに近い画面、ともすると目が疲れそうな配色なのになぜかずっと眺めていられる。そしてだんだん明るい気持ちになってくる。色の力ってあるんだな。

塗りと抜け



この様々な色彩を1画面に成立させるセンスがすごい。

テキスタイルデザイン、というジャンルも頭を過ぎった訳だが「いや、絵画だからアートか…」と絵画とし捉えようとしていた。

こちらは布なのでふわりとなびく。
カラフルな作品がケンカせずに展示

一つ一つの作品が大きいので、大展示室の並びは圧巻だ。

単色3色だと急に企業イメージが。ヨー⚪︎マートかな?


作者のインタビュー


鑑賞導線の最後に作家のインタビュー映像が流れている。
そこでは答え合わせのように非常におもしろい発見があった。

「デザインとアートを分けて考えていない」という発言。

今までの常識を覆す発言であり、彼が描いたものはデザインと見ても絵画と見ても良いということだ。色彩学から見ればデザインとも言えるし、美術側から見れば抽象画というジャンルになるのかもしれない。


これは色合いが好み。



しかし出来上がった絵にカテゴライズや分別は実は必要なく、それを見た人がどう判断しようが自由なのだ。
なんでもカテゴライズしたがる世の中でニュートラルな路線を行く作家。
新しい考え方に刺激を受けた。

そもそもの絵画表現の原点に「知人の履くスカートのドレープを見て良いなと感じた」という話。そこを抜き出したい、と。
テキスタイルから着想を得た平面、そしてまた氏の描いた模様がテキスタイルに戻っていく。循環が生まれている。

【コレクション展示室】


この階段を上がるとコレクションルーム



後半のコレクション展示室ではもの派や具体美術協会の作家の作品を展示。企画展の今井氏の作品とリンクする部分があるように感じる。同じキャンバスに塗られる絵の具でこれだけ違う。そのあたりも比較しながら見るとより楽しめる。

李禹煥の「線より」シリーズで初めて見る作品があった。
「線より」は様々な美術館に収蔵されているが、ハーフサイズなるものを初めてみた。いいな、このコンパクトサイズ。

線より ハーフサイズ



今回のコレクション展示室も充実の内容だった。平面から彫刻までと寺田コレクションの流れがわかる。難波田龍起をまとめての展示もは久々だったのではないか。

【project N 90】

長い廊下に展示しているような。


国内の若手作家の紹介を行うコーナー。今回は山口由葉氏。
ヌケ感のある油彩画、という印象。
画面を前にすると

「どこかで見た風景」「自分も見たことがある」

と感じた。

絵の中に描かれた風景、なのか場面、なのか、自分の脳裏にもこういう色や光景、風景が残っていることがある。
それが油彩がによって目の前に提示されたような、そんな感覚になった。

あー、なんかわかる。夢で見た様な。


今回も3展示室、充実の内容だった。
今後の展覧会も楽しみである。

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