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【ボンド・ボーイ】松谷武判 東京オペラシティーアートギャラリー


松谷武判(まつたに たけさだ)氏の個展が東京オペラシティーアートギャラリーで始まった。
東京オペラシティーの寺田コレクションの中に氏の作品があり、それが好きだった。
黒くてトロリとした作品。

これ。寺田コレクションの中でも好きだった。


コレクション展示室でも見る機会は多く、コレクション・美術館側も気に入っていたのかなーとも思う。

そして満を持してのワンマン。個展開催。
好きだな、いいな、と思っていても作者を掘り下げるところまでいっていなかった。さて一体どんな作者だろうか。

展示概要

松谷武判(1937-)は、60年を越える活動を通して、物質が示す表情や肌理、存在感と生命の波動、流動を交錯させる優れた制作を続けてきました。1960年代前半に当時の新素材であるビニール系接着剤(ボンド)を使って有機的フォルムを生み出すレリーフ状の作品で具体美術協会* の第2世代の俊英として名を馳せ、1966年に渡仏。パリを拠点に、当時現代アートの最前線であった版画の領域で新たな取り組みを開始します。平面メディアにおける空間性と時間性の探求から、やがて表現は幾何学的であると同時に有機的なフォルムと鮮烈な色彩を特徴とするハードエッジの表現に移行。1970年代後半からは紙と鉛筆という身近な素材を用いて制作行為の始原へと溯行し、黒のストロークで画面を塗り込めて生命的な時間を胚胎させる表現を確立。ボンドによる有機的な造形にも改めて取り組み、そこに鉛筆の黒を重ねた作品で新境地を拓きます。

東京オペラシティーアートギャラリー

【具体美術協会の人】


なるほど、具体の人だったか、と作品を見始める。では22年の具体展の時にも出会っていたかもしれない。

初期の作品に東京都現代美術館の所蔵品が出ていた。

あ、これは…


あ!これ見覚えある!よく90年代の常設展室に出でていた作品だ。いかにも現代美術だなぁ、と思い込んで見ていたのだ。

しかし素材がボンドと言われた瞬間、テクスチャーやあのちょっとすっぱい匂いが瞬時に思い起こされるから人間の記憶って不思議だ。

寺田コレクションの黒い作品イメージが強かったが、意識せずに過去、松谷氏の作品と巡り合っていたようだ。

こういうことが最近よくある。

若い頃はあえてキャプションや作家名を見ずに美術展を回っていたところがあり、その頃インパクトがあってこうして覚えている作品は、巡り巡って再び目の前に現れてもちゃんと覚えている。
あぁ、あなたでしたか…となる。
それもまた楽しいので作家名やらキャプションやらに囚われずに鑑賞するのも良いことだったのだな、と。

そして、今は今でその頃とはまた違った見方ができる。ありがたいことだ。
そして自分が好きなもの惹かれるもののルーツやつながりを改めて感じた。

【先日巡った関西方面の美術館から多数出張中】


今回の展覧会は和歌山近代や姫路市立美術館、芦屋市美術博物館など具体の活動が盛んだった関西から作品が多数出張している。

姫路市立美術館からの出張コンビ。


中でも芦屋市美術博物館からの出張作品が大量。先月9月に訪れたばかりだからなんか嬉しい。超親近感。
なかなか関西の美術館へ行けない人にはその地域の所蔵品を見るチャンスでもあるのでとてもおすすめ。

こちらは東京都現代美術館から。なんかこれ運ぶと手が真っ黒になりそうだな。

こう見ると芦屋市美術博物館の所蔵品の方向性は大変大事で、その地域で発信された美術=具体がしっかり収蔵されてきているのが嬉しい。

モノクロの画面に惹かれるのだ。



しかし関東近郊でここ数年「具体」をちゃんとフォーカスした展示は珍しいと思う。今回は松谷さんの個展、という体だけども。

関西で「具体」展をやったころに関東で反応していたのは東近美の所蔵品が一部呼応していた程度だった気がする。

具体美術協会にスポットが当たるのも、2013年の北米での展覧会を始め、2019年のポンピドゥー・センターで行われた展覧会が契機になっているのではないか。日本での会派美術の話だが再考のきっかけが海外から。

まだまだ自分が知らない、自分が生まれる前や生まれてるけど物心付く前の美術動向で何か再発見・再考されることがあるかもしれない。

それはそれで今後も楽しみだ。

カラーも面白い。
これはちょっと場所的に今井俊介氏っぽさも感じた。この場所でやった個展のイメージが強い。


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