【ボンド・ボーイ】松谷武判 東京オペラシティーアートギャラリー
松谷武判(まつたに たけさだ)氏の個展が東京オペラシティーアートギャラリーで始まった。
東京オペラシティーの寺田コレクションの中に氏の作品があり、それが好きだった。
黒くてトロリとした作品。
コレクション展示室でも見る機会は多く、コレクション・美術館側も気に入っていたのかなーとも思う。
そして満を持してのワンマン。個展開催。
好きだな、いいな、と思っていても作者を掘り下げるところまでいっていなかった。さて一体どんな作者だろうか。
展示概要
【具体美術協会の人】
なるほど、具体の人だったか、と作品を見始める。では22年の具体展の時にも出会っていたかもしれない。
初期の作品に東京都現代美術館の所蔵品が出ていた。
あ!これ見覚えある!よく90年代の常設展室に出でていた作品だ。いかにも現代美術だなぁ、と思い込んで見ていたのだ。
しかし素材がボンドと言われた瞬間、テクスチャーやあのちょっとすっぱい匂いが瞬時に思い起こされるから人間の記憶って不思議だ。
寺田コレクションの黒い作品イメージが強かったが、意識せずに過去、松谷氏の作品と巡り合っていたようだ。
こういうことが最近よくある。
若い頃はあえてキャプションや作家名を見ずに美術展を回っていたところがあり、その頃インパクトがあってこうして覚えている作品は、巡り巡って再び目の前に現れてもちゃんと覚えている。
あぁ、あなたでしたか…となる。
それもまた楽しいので作家名やらキャプションやらに囚われずに鑑賞するのも良いことだったのだな、と。
そして、今は今でその頃とはまた違った見方ができる。ありがたいことだ。
そして自分が好きなもの惹かれるもののルーツやつながりを改めて感じた。
【先日巡った関西方面の美術館から多数出張中】
今回の展覧会は和歌山近代や姫路市立美術館、芦屋市美術博物館など具体の活動が盛んだった関西から作品が多数出張している。
中でも芦屋市美術博物館からの出張作品が大量。先月9月に訪れたばかりだからなんか嬉しい。超親近感。
なかなか関西の美術館へ行けない人にはその地域の所蔵品を見るチャンスでもあるのでとてもおすすめ。
こう見ると芦屋市美術博物館の所蔵品の方向性は大変大事で、その地域で発信された美術=具体がしっかり収蔵されてきているのが嬉しい。
しかし関東近郊でここ数年「具体」をちゃんとフォーカスした展示は珍しいと思う。今回は松谷さんの個展、という体だけども。
関西で「具体」展をやったころに関東で反応していたのは東近美の所蔵品が一部呼応していた程度だった気がする。
具体美術協会にスポットが当たるのも、2013年の北米での展覧会を始め、2019年のポンピドゥー・センターで行われた展覧会が契機になっているのではないか。日本での会派美術の話だが再考のきっかけが海外から。
まだまだ自分が知らない、自分が生まれる前や生まれてるけど物心付く前の美術動向で何か再発見・再考されることがあるかもしれない。
それはそれで今後も楽しみだ。