2020年行った美術館まとめ12 「生誕100年石元泰博写真展 伝統と近代。」
2020.11.13
東京オペラシティアートギャラリー「生誕100年石元泰博写真展 伝統と近代。」
1960年代後半の新宿西口の写真が忘れられない。京王百貨店に「開店3周年」の垂れ幕がかかり、小田急百貨店に「祝!全館開店」の垂れ幕がかかる。
写真こそモノクロだが、今もこの写真と同じ建物が2つ並んでいる。毎日見ている風景だ。
石元さんは、何に気づいてこの風景をシャッターを切ったのか。
1960年代の新宿は殺風景に見える。何か研ぎ澄まされていて、今の雑多様相になる前の、プレーンな新宿とでも言おうか。モノクロ写真がそう、シャープに見せるからなのか?何だろう。
同じアングルから一度眺めてみたときに決定的な違いに気がついた。
草、である。
1960年代には蔦や植え込みがまだ何もないのだ。60年後の2020年は草や蔦グリーンがモサモサと生い茂ってる。
(あぁ…アジアだなぁ…)と思った。
60年前この辺りをモダンな街として設計した人はここまで草が生い茂ることをイメージしただろうか。石元さんの見た、シャープな街のイメージだったのかもしれない。
でも、私は草にとっての無法地帯になってる現在のこの街が愛おしいと思う。
何というか、余白が存在している安心感というか。
完璧を目指した60年間かも知れないけれどそうではなくて、よいでしょ、というのを草が教えてくれる。雑多だっていいじゃない。
それが風景の「味わい」になるんだ。
無機質から有機物へ。
面白い気づきのある写真が見れて、良かった。