見出し画像

【1998年の巡回先】特別展「今井祝雄 ―長い未来をひきつれて」 芦屋市美術博物館

今井祝雄(いまい のりお)氏は2022年の大阪での具体展の時に知った作家。

この作品の人!という印象。


具体美術協会に最年少17歳で所属していた方で、具体美術協会解散後から現在も現役作家。

具体の本拠地である芦屋市美術博物館で開催とのことで見て来た。
芦屋市美術博物館は1991年開館。建築は坂倉建築事務所。

2階の出窓が特徴的。
見た感じそこまで広くないかな?と思ったが…
あ、結構中は広々としている。このロビー良いですね!
ビデオテープだ!
2階のあの出窓の部分に立つ


こじんまりしてるのかな、と思ったら結構広々としていた。庭があったり、敷地内にカフェ、小出楢重のアトリエ再現がある。

奥に見える階段がよい。



お隣には谷崎潤一郎記念館。JR芦屋駅からはバスがお薦め。他私鉄の芦屋駅なら歩けるかも。

展覧会概要

本展は、作家活動60年の節目に開催する、美術館では初の今井祝雄の個展となります。1960年代から80年代の平面、写真、映像作品を中心に、コロナ禍に生まれた作品や本展に向けて制作される新作を展示し、若くして作家活動をスタートした10代から現在にいたるまでの多様な活動を多角的に紹介し、今井祝雄という作家の知られざる全体像を明らかにする試みです。

芦屋市美術博物館

面白かった作品

曲がり角ごとにシャッターを押す!
信号が赤だったらシャッターを押す!
と言う作品。

曲がり角ごとの風景写真
曲がった痕跡


ルールを課しながら撮られた写真。
この何かに委ねてシャッターを押す偶然性が面白い。
撮りたい対象物があって撮る、のではなくルールが来たらシャッターを押すという。


面白いなぁこれ!
と思ったけどこれも結局、路上の写真だったと気がついた。
やっぱり路上好きだな自分。そして自分も実行できそうなのが面白いではないか。アートは高尚なものだけでなくこういう日常に紛れてたり自分もできるかも、という視点をもたせてくれる作品もあって、それって大事だ。
ART in you と言ったのは宮島達男だがそれって難しくないと考える。

思わずGoogleマップで確認した

撮影場所の記録がある。これも最高だ。
現在はストリートビューという便利な機能があるので現在の様子を見に行く事ができる。
さっそく好奇心に抗えず見てきた。1977年と2024年の住吉地区。
もちろん殆どの風景は変わっている中でも写真と同じままの建物を1件発見して嬉しくなった。

左下段 5の写真、左側。


まったく住んだことのない地域の路地の今昔を見る。なんとも言えない不思議な気分である。

不思議だけど楽しい…
路上は楽しい。

キャプションの手作り感。


しっかりと読ませる文章。A4の紙に出力され、貼られているラフさ。

紙だな



ここの学芸員さんがしっかり作ったんだなぁというのが伝わる。細かい資料の展示も豊富で夢中になって読んでしまった。

赤信号シャッター
信号機のデザインも時代を感じる
毎日セルフポートレートを撮っているそうだ。
数日前。こう見ると、眼鏡にも時代がある。



ミュージアムショップで崩れ落ちる


芦屋市美術博物館にはミュージアムショップという区画をしっかり区切っての運営はないけれど、ちょっとしたグッズや過去の図録は平置きにしてあり、チケット売り場の人に会計してもらって購入できる。
ふむふむ、と並べられた図録を眺めていたら…

あれ…?あの図録は…

展覧会のフライヤーに採用された作品と図録の表紙作品、違ったんだな…



思わず手に取ったのは「New British Art 」と記載された図録。なんか見覚えある表紙の画像。これもしかして1998年に東京都現代美術館で開催された「リアル/ライフ イギリスの新しい美術」の図録では?

展覧会タイトルはカタカナだった気がするが図録の表紙は英語?と思って背表紙を見たら忘れもしないカタカナフォントが書かれてて確信する。

こ、これは26年前の図録だ!!

当時高校生だった自分は展覧会を見るのに精一杯で解説の豊富な図録の存在なんて知らなかったし、そもそもお小遣いが足りなくて図録なんて買えない。B'zの出ている音楽雑誌を買うのに忙しかった。それが…40歳を過ぎて手に入れることができる奇跡…思わずしゃがみ込んでしまった。
リアルライフ展は、ここ芦屋市美術博物館に巡回していたのだ。

芦屋まで来てよかったなーーーーー!!!!!

サラ・ルーカス とか、「アトランティック」という映像作品の見覚えがあった(サム・テイラー=ウッドという作家だったのか、この後何処かで見た気もする)とか、当時の記憶がぽつりぽつりと思い出される。
そして出品者の女性の割合が多い。


展覧会概要の書き出しが「20世紀が閉じられようとする現在〜」から始まっている時点でもうなんかノスタルジー。もう閉じられちゃって20数年経ったYO!と思わなくものないが。過去の展示概要読むの面白いな。


受付のお姉さんと会計のやり取り中「これすごい古いカタログですよね」と何気なく話を振ってみたが「あ、そうなんですねー、古いものもあるのでなくなり次第終了と聞いてるものもあるんですが…」と。
ぱっと見た感じ、この図録と同い年ぐらいの方だった。
「いや、昔手に入れることができなくて、ここにあるなんて…と驚いて」
「えぇ…そんなことあるのですねぇ、遠くからいらしたのですか?」
古い話題に付き合わせてすまない、と思いつつ感激を伝えてお会計を済ませた。

芦屋まで来てよかった。本当に。
ありがとう、ありがとう!

旅の2日目

この展覧会を見終えて15時半。
ここから灘へ移動し横尾忠則現代美術館へも行って来た。しかし最後に横尾さんはなかなかヘビーだった…しかし展示は面白かったのだ。

解説がめちゃくちゃ面白かった。
世田谷区長…何してん

閉館までしっかり過ごした。


その日は大阪に住む姉とちょっと飲んでから京都に戻ることにした。
三都物語周遊券のおかげて途中下車も自由自在である。あの切符マジ有能。

大阪といえば新しくオープンしたうめきた地区、SANAAが設計するグラングリーン大阪へ。あんな大きな駅の近くにこんな抜けた広場があるのか!

大阪駅から美しい夕焼け。
この日は特に綺麗なのか皆がスマホを向けていた。
実はそう言うシーン好き。虹とか富士山が見えて見ず知らずの人々だけどポジティブな意味で写真撮りたくなる気持ちが集合する場にいるのが好き。



リダイン大阪というフードホール形式の飲食店で一杯飲みつつ。
ディープな大阪の飲み屋ももちろん惹かれるのだがなかなか気軽に入れないので、軽く入るにはこういう商業施設の飲食店はありがたい。

お互いの息子たちの話をしたり、親の様子を伝えたり、私は大阪の仕事が控えていたのでその地域の話などもちょっとリサーチさせてもらったり。

2時間程度だったが良い時間だった。

京都まではスムーズに帰って来たが、そこから先は21時以降の電車が極端に少ないことをその場で知り、驚く。
結局宿に戻ったのは22時前。その時間は大浴場も空いていてのんびりできた。
次の日は9時に桂離宮。
図録が嬉しすぎてパラパラ眺める。
朝ご飯の算段をしつつ、夫からきた長男のテスト勉強進捗相談に返信しつつ笑、
23時就寝。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?