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再度スピノザ その1

 先回も少し触れたが西洋の哲学者で一番自分になじむのは、スピノザであろうか。
スピノザは、オランダに生れたユダヤ人の哲学者です。

 彼は、ポルトガルでのユダヤ人迫害から逃れてアムステルダムに移住してきた裕福な貿易商の家に生まれました。
 後に、ユダヤ教の信仰や聖典の解釈を批判したため、1656年、スピノザ23歳のときに、シナゴーグから破門され、追放されてしまいました。
 
 

オランダのシナゴーグ

スピノザは、ある意味保守的で偏狭なユダヤ人社会から解放され、自由を得ました。
 
 オランダのあちこちに移住を重ね、哲学教師とレンズ磨きの職人をして生計を立てながら質素な暮らしの中で執筆活動を続けます。
 医学や社会環境の熟成が今ほど整っていない過去に於いて、純粋な天才の多くがそうであったように44歳という若さで結核で亡くなっています。


スピノザが暮らしたアムステルダムのユダヤ人街 Webより

 スピノザの思想は「汎神論」の一形態として知られています。スピノザの汎神論は「神即自然」であり、神の存在を自然の事象とし、また事象は、すべて神の中に存在すると定義づけられています。概念的には東洋人の私にとってその辺りが馴染みやすいと言えるのでしょう。

 しかし、この概念は、西洋、殊に伝統的なキリストの人格的な神の概念と根本的に対立するものなのです。
 スピノザは、従来の神の概念は、絶対者は純粋な存在性にあるがゆえに科学である哲学にはそぐわないことを主張したのです。

 ユダヤ教、キリスト教、イスラム教が共通の根本教義とする神は、唯一絶対の超越神である。
 スピノサの上記で述べた汎神論は、当時の神学や存在論を逸脱した非常識且つ過激な危険思想と指摘され、ヨーロッパの伝統的思想から外されます。
 その100年後のドイツの汎神論論争を契機に見直され、現在では、さまざまな解釈が行われ蘇ったのです。

 スピノザは、「神すなわち自然」が万物の原因だとします。
動植物、無生物でさえも、あらゆるものは精神性を備えており、それらの物質は精神性とともに大きな神の一部だとしました。この「存在するあらゆるものはただひとつの実体からなっている」とする概念は、仏教の一元論にも似ていて、スピノザの実体一元論として後世に影響を与えたのは当然であった。

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