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休校中チャレンジ~長唄三味線~最終日ミニ発表会

いよいよ最終回 ミニ発表会

4月13日から始めた休校中チャレンジ。合計17回、日にちにすると約1か月に及ぶチャレンジの今日が最終日。いよいよミニ発表会の日です。

ライブ配信前に稽古をしましたが、娘が急に滑らかに弾けなくなってしまいました。前日の追い込み稽古では上達を見せてくれたのに、ここに来て一節がすっぽり抜けたり、どこを弾いているのか分からなくなったり。やっと全てを滞りなく弾ける様になったのに、まさか当日になって曲が吹き飛んでしまうとは。

娘は譜面で覚えるより、ひたすら指に染み込ませていく昔ながらのお稽古法です。少しでも集中力が途切れたり、「もう覚えたから大丈夫」と言う慢心が出て来れば、頭や指が躓くのでしょうか。何も考えずとも身体が動くと言う境地には、娘はまだまだ行き着いていません。

ミニ発表会のライブ配信は2時間後。挫けた娘の気持ちを立て直しつつ、的確に指導しなければなりません。泣き出してしまった娘を宥めつつ、一節一節丁寧に指導していきます。

舞台が次々と中止になったこの数ヶ月。本番前の緊張を久々に思い出して来ました。子供が出る舞台は、自分が出るよりも緊張してしまいます。

いよいよ本番。子供達もいつもの稽古の配信とは違い、緊張している様子。娘はなんとか忘れていたところを思い出してくれましたが、本番にどの娘が現れるのか。舞台の神様は微笑んでくれるのか。とにかく、最後は「楽しんでね」と声を掛けてあげました。

弾き始めると、娘はスラスラと演奏していきます。最後の方に来た時、今までの事を思い出いし涙が出てきました。完璧に演奏できました!その後の息子もほぼ完璧に演奏し、二人とも最高の出来でした。17日間のお稽古の中で、一番上手く弾けました。舞台の神様が、二人の努力を見ていてくれていました。

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演奏は自分との戦いです。
己の才能と向き合い、技術を向上させるにはひたすらお稽古しかありません。曲の理解を深める為に歴史や文化を学び、本番を万全に迎えられる様に日々心身を整える。以上のことは全ての職業に通じることではありますが、それは孤独な戦いです。その苦しさは本番を迎え、お客さまの前で演奏する事が出来てやっと報われます。
雑念から解き放たれ、演奏するのがただただ気持ちが良い瞬間も訪れます。
けれどお客さまに受け入れられ拍手に包まれてこそ、それまでのお稽古の日々がやっと報われるのです。
長唄を現代に息づかせるべく長唄の情熱を表現する場所を模索していますが、それがどこであっても、長唄を楽しんでくれ、応援して下さる方々がいてこそ、我々プロの演奏家は存在し得るのです。

今回の休校チャレンジは演奏だけではなく子育ての面でも、見守って下さった方々の存在に支えられました。子どもたちはコメントに励まされ、絵文字に喜び、食卓では三味線が楽しいと言う言葉すらでました。

演奏会ではお客さまにお声を頂くのは本番しかありませんが、インスタライブだとお稽古でも毎回コメントを頂けるのが良いですね。
本来ならばお稽古の結果を本番で見ていただくしか出来ないのですが、今回はお稽古の成長段階を見ていただけているのが新鮮でした。本番に向けての経過を皆さまにリアルタイムで応援していただくのは初めての体験で、新しい形のお稽古の日々でした。
これまでは親子のみの空間だったお稽古場がネットを通して皆さまに見守られ、言葉をかけていただきながらお稽古を重ねたのは、子どもたちの大切な経験になったと思います。今日の演奏は正しく、皆さまに支えられて出来たものです。

長唄を次世代に引き継ぐ為に、今後も色々なアプローチを重ねていきます。
伝統を引き継ぎつつ、長唄の裾野を広げるにはどうすれば良いか。
今回得た学びは、どの様な方法で長唄の魅力を伝えるとしても、それを受け取り共鳴してくれる方々の存在が常に肝だという事です。
長唄演奏家に限らず、未来の見通しが付かなくなった時代に私たちは生きています。しかしこの17日間の皆さまとの交流は、暗雲が立ち込める日々の、一筋の光明でした。

応援して下さった方々の存在に感謝いたします。
次はリアルに劇場でお会いすることを楽しみにしています。

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次世代への継承という意味だけでなく、お稽古を通しての子育て、父と子の時間。私の想いなどをお伝えし、感じて頂ければ幸いです。またアナログな長唄の世界、ネット配信など新たな試みに挑戦し、長唄の魅力を広めていきたいと考えています。宜しくお願い致します。