僕の知らない世界
経験から学ぶことは沢山ありますし、
経験からしか学べないことも星の数ほど存在します。
特に僕のような勉強嫌いで頭のできが悪い者にとっては、
経験する以外に学ぶことも学習することもできないことは
いくつもあるのです。
この世に生まれたその日から還暦までの間、
幸なことに僕は病気らしい病気もせず
体だけは丈夫だったし健康優良人だったので
病気というものを経験しないまま生きてきました。
恵まれていると言えば確かに恵まれていました。
骨折とか歯の治療とか
一時的な通院や治療は経験しています。
けれど、例えばガンとか腎臓や肝臓を患っている
糖尿病が・・高血圧が・・・
そういう経験は皆無だったので
なにしろ病気を治療するための入院や投薬というものには
まったく縁のない生活を続けてきたのです。
良く言えば恵まれた60年でした。
悪く言えば、病気や医療に関しては興味すら持つこともなく、完全な医療無知なのです。
そうです、そこにこそ僕の知らない世界がありました。
この年齢になってやっと、
病気をするとどんなことが起こるのか何が必要なのか、
病と戦う人が日々何を思い生活しているのか
自分はそんなことにも気付かない無知であることを知る機会が増えたのです。
大きな病院で「紹介状が必要です」と言われる
薬が出される時は「お薬手帳」を渡されるので、これを保管しておかないと治療を継続する時に困る
お医者さんにはできる医者とそうではない医者がいるだけでなく、それぞれに専門分野があるので、初めてかかる時には調べておくのが良い
薬にはジェネリックとそうでないものがあって、薬局でどちらが良いか尋ねられることがある
多分こんなことくらい、誰でも普通に知っていることですよね。
でも今までの僕はそんなことにも疎くて、、、
紹介状なんて誰からももらっていませんし持ってないので
初めての病院で紹介状が必要ですと言われても、
「病院なのに病気しても怪我をしても診てくれないのですか?」
と受付の人に詰め寄ったことがあります。
炎症を抑える薬とか痛み止めとか出されることありますよね。
そういう薬って何か月も飲み続けるわけじゃないから、薬局で「お薬手帳」
と言われても「要りません」と言って断っていたし、
渡されたこともありましたけど僕は捨てていました。
病院はとりあえず内科とか外科とか、自分の病気に合ったところへ行けば良いのだというくらいの事しか知りませんでした。
お医者さんのレベルとか経験値とか専門があるとかないとか、そんなことは考えたこともありません。
ジェネリックって今でも何のことなのかわかったようなわかってないような感じですが、ジェネリックではない薬よりも安価らしいということはわかったので聞かれればジェネリックでお願いしますとは答えています。
以前は薬のメーカーとか社名だと思っていました。
今までは健康で、風邪をひいても無理をしても一晩寝れば治る。
でも還暦を過ぎたあたりからは、体のあちこちに小さな不具合が出始めました。
命に関わるようなとか、長期療養しないといけないとか、そういう疾患ではないので助かってはいますが、
明らかに怪我以外で病院にかかる機会は増えました。
そういう状況になってやっと、
・病気を抱える人の辛さや大変さ
・医療機関のしくみやその利用方法、治療の受け方
・薬の意味、薬の目的
・健康保険で支払われる医療費がどうなっているか
恥ずかしい話ですが、この年齢でそんなことを少しずつ知るようになりました。
特に病気を抱える人の気持ち、その人の身になって考えたことなんてありませんでした。
僕のように車もバイクにも乗れる人は良いですが、皆が皆そうではありませんから、病院に行けと言われても人によっては公共交通機関で行ける地域も限定されます。
出先で発症したらどうするのかという不安があると、ちょっとした旅行でさえ躊躇います。
お薬は通院するしないに関係なく薬局へもらいに行くので往復するだけでも面倒だったり時間を要すものです。
お年寄りならそれすら叶わないことだったりします。
日々の体温や体調の変化を観察したりする苦労もあります。
僕は30から40代くらいまでは、
医療機関というのは大病や大怪我の人が世話になるもので、
自分は永遠に無縁な存在だと思っていました。
というか、医療のお世話にならないといけない体になるなんてこと、1ミリも想像したことすらありません。
考えたくはないですけどね、今現実に病院へ行く機会は多くなりました。
大病でも難病でもなく、ちょっとした不具合が増え始めただけですから今はいいのですが、
今後数年のうちに本当に僕の知らない世界との行ったり来たりが本格するのかもしれません。
だからと言って決して暗い気持ちにはなりません。
元気にバイクを乗り回さないといけませんから。
とは言え、この年齢で知らない世界に首を突っ込むのは
なかなかの重労働です。
今更ながらですが、健康は何よりの財産だと思う今日この頃です。