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戸籍の80年廃棄が現在も続いていたら?辿れる先祖と戸籍はどのくらい減るのかを検証(全ての役所で廃棄があったと仮定)
戸籍の収集は先祖調査の基本です。現在取得できる最も古い戸籍は明治19年に編成された明治19年式戸籍です。平成22年(2010年)までは、戸籍が除籍簿に綴られてから80年(実際には除籍になった翌年を起点として80年。大方は81年を経過した物)を経過した物は廃棄しても良いという法律になっていましたので、実際に請求すると、既に廃棄されいて、もう取れませんと言われることがあります。80年を経過した除籍を廃棄するか否かは、役所の自由裁量でしたので、日本の自治体のおよそ8割は廃棄は勿体無い、子孫が取りに来るだろうと言うことで廃棄を拒み、明治19年式戸籍まで取得できますが、県庁所在地の大都市や富山県の地方都市などでは80年廃棄を守ってきましたので、取得できず、江戸時代まで辿れない可能性があります。殆どの系統が80年廃棄を実施していた役所に当たる場合、あまり良い結果にならないと聞いています。運次第と言えるかもしれません。
さて、そんな80年廃棄のルールが変わったのは平成22年の事です。日本人の平均寿命が延び、相続で必要な戸籍を請求したら、故人の出生時の戸籍が既に廃棄されていて取得できないという訴えが全国で続出したため、政府が慌てて150年に延ばしたみたいな話を聞きました。
今回は、もしも80年廃棄の法律が令和時代の2024年現在も運用されていて、全国の役所全てで80年廃棄をきっちり守っていた場合、私の辿れる先祖はどれくらい減ってしまうのかを検証してみました。もしもボックスやパラレルワールドみたいな感じでご覧ください(笑)
①実際に自身で請求した役所と実績数
父方
秋田県湯沢市…明治19年編成、明治21年除籍を取得(廃棄は一切していない。役所で直接確認)
長野県茅野市…明治19年編成、明治23年除籍を取得(廃棄は一切していない。役所で直接確認)
山形県金山町…明治29年編成、明治37年除籍を取得(廃棄は一切していない。役所で直接確認)
母方
長野県松本市…明治19年編成、明治29年除籍を取得(旧四賀村の戸籍は廃棄が無いと思われる)
長野県安曇野市…明治19年編成、昭和6年除籍を取得(廃棄していない役所だと思われる)
新潟県長岡市…明治19年編成、明治29年除籍は空襲で滅失(空襲に当たらなかった地域の戸籍は廃棄していないことが多いようだ)
富山県射水市…明治19年編成、明治30年除籍を廃棄(80年廃棄だった役所。昭和2年以前は取得できない)
神奈川県横浜市…大正15年編成、昭和31年除籍を取得(関東大震災でそれ以前は滅失。そもそも残っている戸籍数が少ないので、80年廃棄はしていない)
神奈川県平塚市…明治19年編成、明治30年除籍を取得(廃棄していないと思われる)
茨城県坂東市…明治29年編成、明治41年除籍を取得(壬申戸籍から明治19年式戸籍の移行が遅かった。廃棄なし)
埼玉県さいたま市浦和区、緑区、南区…明治19年編成、明治43年除籍を取得(一部廃棄があると聞いている。私は該当なし)
取得できたはずの
A 明治19年式戸籍…37通【廃棄は1通(富山射水)、焼失は4通?(新潟長岡)を含む】
B 明治31年式戸籍…9通【焼失は1通(横浜)を含む】
C 大正4年式戸籍…15通
戸籍だけで辿れた先祖数…165人(滅失、廃棄分も含む)
*筆者の請求した新潟県長岡市では、戸籍謄本が焼失していました。富山では1通、廃棄に当たりました。もし、これらを免れていた場合、あと先祖は6人くらい分かったと思いますので、それらを追加した数です。
②2024年まで80年廃棄ルールが続き、全ての役所で確実に廃棄されていたと仮定すると
2024年の81年前は、1943年(昭和18年)です。昭和18年までに除籍簿に綴られた戸籍は廃棄対象になったという前提で検証実験をしてみましょう。
(ちなみに、先祖に興味を持ち、実際に請求した年は、2024年とします)
取得できた戸籍数
A 明治19年式戸籍…2通!!?【35通廃棄!!?】
1通目(文久3年生まれで昭和23年まで長寿を保った5代の祖が戸主の戸籍)
2通目(明治7年生まれで、明治29年に家督相続し、昭和20年まで生きた高祖父を戸主とする物)のみ…
B 明治31年式戸籍…3通【5通廃棄】
C 大正4年式戸籍…14通【1通廃棄】
戸籍だけで辿れた先祖数…165-75=90人…(恐)
このように、特に明治19年式戸籍の被害が尋常じゃないことがご理解いただけると思います。請求した全ての役所が80年廃棄ルールを守っており、これが2024年まで運用されていた場合、最悪の結果が上記の取得数だったと言うことです。
残されていた戸籍は、平成14年生まれの私から見ると、大方は高祖父母(明治生まれ)が戸主の物で、その場合は、両親欄から、江戸時代の幕末付近(慶応、元治、安政)に生まれたと思われる5代の祖の名前を伺い知ることが出来ますが、一部の系統では曾祖父母兄が戸主の物までしか取れず、そこに書いてある両親欄から、高祖父母の名前を知れるだけで、高祖母の旧姓すら分からないという状況に陥っていました。
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分かりやすいように、私の家系図で色分けしました。黄色は、お墓や文献(戸籍以外)から辿って分かった先祖です(先ほどの計165人には含んでおりません)黒が、全国の役所で80年廃棄があり、その法律が2024年まで及んでいたら、分からなくなっていた先祖です。高祖父母が早くに死んでしまって除籍になっていた場合、5代の祖の名前すらチラホラわからなくなっていました。
私は5代の祖の全てのお墓参りコンプリートを達成しましたが、それは高祖父母全員の旧姓と本籍地が戸籍から分かったからの話。高祖父の旧姓が分かるだけで、現地で墓を見つけて直系先祖が新たに判明していきます(家系図の黄色部分は墓で新たに判明していった箇所)が、そこが分からなければ、探す手段なんてありませんし、新たに判明する可能性が消え失せます。
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ここまで戸籍の取得状況が違う世界に生きていたら、先祖探しの醍醐味を失っていました(笑)
③終わりに
このように、戸籍を1つさかのぼれることは先祖調査で重要です。戸籍の保存期限は現在、150年で、しばらくの間は廃棄されることはありませんが、現行の法律では、2037年から明治19年編成の戸籍を廃棄できるという内容になっています。先祖に興味がある人は、貴重な先祖様の記録の詰まった戸籍が廃棄される前に必ず取得しましょう。家系図作成は後回しでも構いません。今回の話は以上です。ご覧くださりありがとうございました。