【発達障害短編小説】異能の輝き〜第13章 嶋田の能力〜
第13章 嶋田の能力
通路の奥にある隠れ家は、思ったより広く整えられていた。
無骨な金属製の机や古い椅子がいくつか並べられ、壁には書類や地図がびっしりと貼り付けられている。
その一部は、政府や軍の機密情報を記したもののようだった。
「ここが俺の避難場所だ」
嶋田は冷静に言い、椅子に腰掛けた。
「今は安全だが、いつまで続くかはわからな
い。あいつら、俺たちを根絶やしにするつもり
だからな」
葵と大和は緊張を解くことができず、黙って嶋田の話を聞いていた。
真奈美だけがその視線を嶋田に据え、やや疑い深い目で彼を観察していた。
「あなたも追われているの?」
真奈美が質問した。
「そうだ。俺も、あの連中に目をつけられてか
ら長いこと逃げている。だが俺には他の超覚醒
者と違う”特別な能力”がある。だから奴らも
慎重に動いている」
嶋田はその言葉と共に、机の上に置かれたコップを指差した。
次の瞬間、コップが微かに揺れ、徐々に消えていくように溶け込み、完全にその姿を失った。
「これが俺の能力、『消去』だ」
嶋田は淡々と語り続けた。
「物質だけでなく、ある程度の生物や空間の痕
跡を完全に消し去ることができる。政府も俺の
能力を恐れているから、直接手を出すのをため
らっている」
「そんな能力が…本当に消せるんだ」
大和が驚いた声で言った。
「ただし、この力には制約がある」
嶋田が静かに続けた。
「一度消したものを二度と戻せない。だから、
慎重に使わなければならない。間違って消して
しまったら、もう取り返しがつかないんだ」
その言葉に、葵はゾッとした。
強力な能力であるがゆえに、恐ろしい力でもある。
嶋田の瞳には、そんな能力を持つ者の孤独と苦悩が見て取れた。
「なるほど…だから、あなたは一人でここに隠れていたのね」真奈美が言った。
嶋田は黙って頷いた。
次回、「第14章 次なる作戦」