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【発達障害短編小説】異能の輝き〜第10章 絶体絶命〜
第10章 絶体絶命
廃ビルの窓の外、追跡者たちの無骨な戦闘装甲車が音を立てて接近していた。
ヘリコプターのローター音も上空で響き渡り、逃げ場はもうほとんど残されていない。
葵たちの呼吸は荒く、静まり返った廃ビルの中に自分たちの心臓の鼓動が大きく響いているのを感じていた。
「逃げ道は…?」
葵が真奈美に尋ねた。
真奈美は迷いなく廃ビルの奥へと歩き出した。
「地下通路があるわ。そこから出れば、少なく
とも一時的にはやり過ごせるかもしれない」
「それでも追いつかれる…奴ら、手加減してな
い。どうにかしないと」大和が焦りと苛立ちを
押し殺しながら言った。
「私が時間を稼ぐわ」
と真奈美は決意を固めたように言い、鋭い眼差しを葵と大和に向けた。
「私の能力なら、短時間だけでも彼らの精神を混乱させられる。その間にあなたたちは地下通路を使って逃げて」
「無理だ! 一人で残るなんて、どう考えても
危険だ!」
大和がすぐに反論したが、真奈美は静かに首を振った。
「大和、これは私の役目。リーダーとして、そ
して先に覚醒した者として、みんなを守るため
にここに残るのが最善の選択よ」
葵は真奈美の覚悟に言葉を失った。
しかし、その決意に触れて、彼女もまた何かを感じていた。
これ以上、誰かを犠牲にして逃げるだけではダメだ。
この状況を変えるためには、自分たちの力を最大限に使わなければならない。
「私も残る」
葵は震える声で言った。
「何言ってるんだ、葵!」
大和が驚いて叫んだ。
「お前は逃げるべきだ。まだ未来を見通す力が
安定していないんだぞ」
「だからこそ」
葵は大和を見つめた。
「私はずっと未来が見えるだけで、それをどう
生かしていいかわからなかった。でも今、私は
自分の力を使うべき時だってわかる。このまま
逃げているだけじゃ、私たちはどこまでも追わ
れ続ける。ここで戦わなきゃ、終わらないん
だ」
真奈美は静かに葵を見つめ、頷いた。
「わかった。あなたがそう決めたなら、一緒に
やりましょう」
次回、「第11章 戦いの始まり」