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【発達障害短編小説】異能の輝き〜第9章 決意〜

第9章 決意

 廃工場を離れ、真奈美の指示で辿り着いたのは、郊外の廃ビルだった。
 荒れ果てたビルの中はひんやりとしていて、不気味な静寂が広がっていた。
 皆が疲れ果てた様子で、その場に座り込んだ。

 「ここで少し休もう」

 と真奈美が言った。

 「でも、長くはここにもいられない。彼らはす
 ぐに追いつく」

 葵は息を整えながら、考え込んでいた。
 自分の未来予知が完全ではないこと、そしてこの状況下でどう役に立つかが分からず、焦りが募っていた。
 だが、大和はそんな彼女の隣に座り、静かに声をかけた。

 「お前はちゃんとできてるよ。あの爆発を予知
 できたおかげで、俺たちは助かったんだ」

 「でも、それだけじゃない。私の力はこんな風
 に役に立たないんじゃ…」

 大和は葵を見つめ、真剣な表情で言った。

 「力が完璧じゃなくても、それをどう使うかが 
 重要なんだ。俺も、自分の能力がコントロール
 できなくて困ることが多い。でも、だからこ
 そ、俺たちは助け合って生き抜くんだよ」

 その言葉に葵は少しだけ気持ちが軽くなった。 
 彼女は自分の不完全な力でも、誰かを救える可能性があることを感じ始めた。
 そして、この逃亡生活の中で、彼らが手を取り合い、互いに支え合うことが最も重要だと理解した。

 「ありがとう、大和」葵は静かに微笑んだ。

 「よし、じゃあ次の場所に行く準備をしよう」
 と大和が言い、立ち上がった。

 しかし、その時だった。
 建物の外で何かが大きな音を立てた。
 爆発ではない。機械が作動するような低い音。続いて、重々しい足音が響き渡る。

 「来たわね…!」

 真奈美が警告する。

 彼らは再び包囲されていた。
 追跡者たちは、今度は機械的な武器を持ち、さらに強力な部隊を送り込んできたのだ。
 葵たちは再び逃げ場を探さなければならない。
 だが、この場所で果たして逃げ切ることができるのか、彼らの能力だけではもう限界かもしれなかった。

次回、「第10章 絶対絶命」

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