【発達障害短編小説】異能の輝き〜第6章 共鳴〜
第6章 共鳴
翌日、葵と大和は廃工場に通い始めた。
そこで待っていたのは、能力を持つ者たちが互いに力を引き出し合う訓練の場だった。
真奈美がリーダー的存在となり、それぞれの能力の特性を理解し、制御するための練習が行われていた。
まず、葵は自分の「予知能力」をどう活かすかを試みた。
しかし、未来が断片的にしか見えないという特性上、それをコントロールすることは難しかった。
頭に浮かぶのは一瞬の映像であり、それが何を意味しているのかを瞬時に判断しなければならなかった。
「焦らないで」と真奈美は優しくアドバイスした。
「予知は感覚の延長にある。意識を無理に向け
ようとすると逆に混乱するわ。リラックスし
て、流れに身を任せることが大切よ。」
真奈美の助言を受け、葵は自分の感覚を研ぎ澄ます練習を続けた。
少しずつ、未来が見える瞬間の前兆を感じ取ることができるようになっていった。
それは、まるで深い霧の中で微かな光を探すような感覚だった。
一方、大和は自分の能力を発揮することに長けていた。
彼の脳は常に高速で情報を処理し、周囲のあらゆる物事を瞬時に理解する力を持っていた。
複雑な機械を解体し、数秒で再組み立てるなど、彼のスキルは日に日に進化していた。
しかし、彼もまたその能力に苦しんでいた。
脳が過剰に活発な状態に陥ると、思考が制御できなくなり、頭痛や混乱が襲ってくる。
能力の暴走を防ぐため、彼もまた訓練が必要だった。
そんな中、葵は次第に他の能力者たちとも打ち解け、彼らの持つ様々な能力に興味を抱くようになった。
ある者は念動力を操り、別の者は触れたものの記憶を読み取る力を持っていた。
それぞれが自分の力を持て余し、制御に苦戦している姿を見て、葵は彼らと共に生きる決意を強くしていった。
次回、「第7章 新たな危機」