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【発達障害短編小説】異能の輝き〜第11章 戦いの始まり〜

第11章 戦いの始まり

 真奈美と葵は一緒に廃ビルの入り口へと戻り、やがて近づいてくる追跡者たちを待った。
 彼女たちは心を静め、それぞれが自分の能力に集中していく。
 真奈美は精神の波動を高め、相手の感情を操作する準備を整える。
 一方で葵は、未来の映像が頭の中で流れるのを感じながら、それをできる限り正確に把握しようと努めていた。

 「彼らが来たら、私がまず精神的に混乱させ
 る。その後、葵、君が未来予知で逃げ道や次の 
 行動を指示して。大和たちが地下通路から逃げ
 切るまで、何とか持ちこたえるのよ」

 その時、足音が近づいてきた。
 黒い装甲服に身を包んだ特殊部隊員たちが、ビルの入り口に現れた。
 彼らの手には無慈悲な火器が握られている。
 命令に従うだけの冷たい目が、葵たちを標的として捉えていた。

 「今よ…!」

 真奈美が息を呑み、力を発動させた。

 彼女の意識が部隊員たちに届いた瞬間、彼らの動きが一瞬止まった。
 彼らの表情が揺らぎ、戸惑いや混乱が生じ始めた。
 真奈美の力が、彼らの感情を揺さぶり、意志を乱しているのだ。

 しかし、それも長くは続かない。
 部隊の中には、精神的な攻撃に耐性を持つ兵士もいる。
 彼らはすぐに体勢を立て直し、銃を構えてきた。

 「葵、次の動きを!」

 真奈美が叫んだ。

 葵は瞬時に未来を視た。
 敵の銃弾が飛び交う様子、真奈美が倒れる映像がよぎった。
 しかし、その映像の裏側に、もう一つの可能性が見えた。
 瓦礫の陰に隠れれば、銃弾を避けることができる。

 「真奈美、左の瓦礫に隠れて!」

 葵は叫んだ。

 真奈美はすぐに指示に従い、左に飛び込んだ。
 瞬間、彼女がいた場所に銃弾が雨のように降り注いだ。

 「うまくいった…!」

 葵は自分の能力が初めて役に立ったことに安堵した。

 だが、次の瞬間、ビル全体が大きく揺れ、葵たちの頭上に崩れ落ちるような音が響いた。
 敵はビルごと葵たちを捕えるつもりだった。
 部隊の背後に現れた巨大な装甲車が、その火力でビルの基礎を揺るがしているのだ。

 「やばい、早く逃げなきゃ!」

 大和が駆け寄ってきた。

 「地下通路に向かうんだ!」

 葵と真奈美は一瞬顔を見合わせたが、もう時間はない。
 崩れゆくビルから脱出するため、二人は大和の後に続き、地下通路への階段を駆け下りた。

次回、「第11章 戦いの始まり」

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