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思い立って資格を取るまでのお話(5)

いきなりピンチ 

本が買えない!

 ひとまず自分の現在地を知れたことで、私は一刻も早く勉強を進めたい! と思うようになった。その割には資格を取りたいと思った4月20日から3週間と少し。そろそろ本腰を入れて勉強を始めたい。
 これまでの私ならいつの間にかフェードアウトしていただろう。思ってから3週間が経ってもなお、「勉強したい」と思って行動に移そうとしたのだから、やはり私の本気度は今までとはちがったものだったのだと、今振り返ってみても思う。
 以前から図書館や書店で、資格関連の本を立ち読みすることがあった。そのときに興味本位で保育士の本に目を通したこともあるので、保育士の資格取得に向けたテキストが市販されていることは、すでに知っていた。
 自宅から少し行ったところに割と大きめの繁華街がある。そこの大型書店であればきっと資格関連の本も売っているだろうと踏んで、いざ、買いに行くことにした。
 世間は2度目の緊急事態宣言中。前年のような多くの店が営業を休止するような閉塞感はないにしても、「不要不急の外出は避けるように」とあちこちで言われていたし、私自身に外出の際には人の目を気にするところがある。でも、勉強のためのテキスト購入は「不要」じゃないもん。さらに勉強を始めたいと思ってから3週間が経っているから「不急」じゃないもん。だから、書店に出かける!
 その前に、もしかして昨年同様休業しているかも? と、事前に書店が営業しているかを確認した。
 
 現在休業中。
 
 無駄足にならなかったと考えたら、事前に調べておいてよかったと言えるだろう。別の繁華街にも大きな書店はある。行く予定だったところが休業しているのだから、特に調べはしなかったが、別の大型書店も休みかもしれない。
 
 このときの様子を、私は動画に収めている。
 早速ピンチ。テキストが買えません。
 ピンチはピンチ。だからといって、ピンチのまま放置していていいのだろうか。放置、その時間がもったいない。ならば、テキストがなくても何かできることはないだろうか。

保育所保育指針

 テキストがなくても勉強を始めたいところだ。そろそろ資格を取りたいと思って1ヶ月、いい加減勉強を始めないとという焦りの気もちだけが、どんどん高まっていく。
 いつもの私であれば、「思うようにいかなかった」ことも、挫折のひとつになり得る要因。ここで挫折しなかったのは、思うようにいかないことのショックよりも「勉強したい!」という気もちのほうが勝っていたことになるのだろう。まったく何もしないよりは、ほんの少しでも進めようと、テキストがなくてもできる勉強を考え始めた。
 
 そこで思い出したのが、「保育所保育指針」。
 
 過去問題を解いていて、「保育所保育指針」という文字は何度も目にした。特に「保育原理」、「保育実習理論」で見たような気がする。それ以外の科目でも見たかもしれない。何度も目にしたということだけは確実で、ということは、その指針はそれだけ大切な扱いであるということではないか?
 まずは「保育所保育指針」がどういったものかも調べず、何となく「大切なものなのだろう」という感じでパソコンで検索をかけた。すると、厚生労働省のページにPDFファイルで掲載されていた。これをプリントアウトして、目を通してみる。時には「保育原理」で出てきた問題と照らし合わせながら、穴抜きになっていたり、ここは大切なんだろうと思う箇所を、適当にマーカーでなぞっていく。そうすると、あちこちがマーカーだらけになった。マーカーだらけになった指針に、もう一度目を通してみる。
 この指針を最後まできっちり一言一句覚えたかというと、覚えていないという自信だけはある。ただ、保育所での保育内容についてのガイドのようなものだということはわかり、これを読んだあとで、「保育原理」の過去問題で保育所保育指針に関するところだけを、改めて解いてみた。相変わらず点数は取れないが、読んだ項目が出題されていると、「おー、さっき読んだところだぞ?」とうれしくなる。
  
 後にテキストを入手してから見ると、上下巻に分かれたテキストで、「保育所保育指針」は片方に巻末資料としてついていた。個人的には「保育所保育指針」だけで一科目にしてもいいんじゃないかと思うぐらい大事な指針だと思う。巻末資料だけにとどめておくのはもったいない。

人名と功績

 「保育原理」では、人名と著書や功績を結びつける問題も出てくる。これについては、モンテッソーリもデューイもペスタロッチも、名前としては聞いた覚えがあった。そうそう、大学の教職課程の授業で出てきた。ところが見事に功績などは忘れてしまっている。「生活が陶冶する」と言ったのは? 「隠者の夕暮れ」の著者は? (いずれもペスタロッチ)
 「保育原理」に限らず、「教育原理」でも「保育の心理学」でも、もちろん他の科目でも、人名と著書や功績を結びつける問題は出てくるし、海外の例だけでなく日本国内の例も出てくる。わからないなりに過去問題を解き続け、そこで出てきた人名をピックアップ。採点後にエクセルでリストにした。
 このおかげで日本人の功績については割とすぐ覚えられたが、まだまだ見たことのない人名にあたふた。カタカナに弱いらしい私は、いつまで経っても海外の人名と著書や功績については覚えられず。ここは筆記試験直前まで苦労した。
 
 テキストがないなりにできる勉強は、「保育所保育指針」に目を通すことと、できなくてもいいので過去問題を解いて出題傾向を知ることだった。この出題傾向を知るのは自分なりに得意科目でしかできなかったが、こうしている中で見えてきた自分の傾向があった。 

得意と苦手の傾向

 試験の中には、実例問題も含まれている。私は割とこの実例問題が得意なようで、自分の感覚で「これかな?」と思うものが、だいたい正答。迷ったときでも確実にこれだろうという回答を含む選択肢を選んで、結果正答だということが多々あった。どうやら、実例問題と私の感覚の波長が、うまく合うようだ。
 他にも、「保育実習理論」では音楽に関する問題が出てくる。その中でコードネームについて問われる問題は出題方法が異なりながらも必ずあるので、これも、もともとマイナーコードぐらいまでならどの音が該当するのかを把握していたことが功を奏し、ほぼ確実に正答を選ぶことができた。
 「子どもの保健」「子どもの食と栄養」は、現在進行形で子どもの予防注射や感染症に対応しているし、離乳食についても2人分、試行錯誤ながら通ってきた。その意味では経験のみで解答できる部分があるのも心強い。過去問題で「和食」についてちらちらと見かけたが、これは2013年に「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことも大きいだろう。和食の範囲に含まれるだろうか、「郷土料理」なら、日本地理が割と得意で、「桃太郎電鉄」や「秘密のケンミンショー」などといった娯楽も好きなので、たぶん比較的答えられると思う。
 逆に、福祉関係の科目は避けていた。私の中に「福祉は難しくて複雑」という思いと、もともと制度や法令を暗記することが苦手。やらなければと思うものの避けていたのだろう。
 
 そうすると、私は実例・実践系の問題が得意で、人名や功績、制度などの問題が苦手だということが、傾向としてわかってきた。もちろん勉強するにあたっては得意も苦手も関係なくしなければならないが、この傾向を知ったことで、今後の勉強への取り組み方も変わってくるかもしれない。
 
 最後に、この章の補足。
 テキストは、書店でなくてもネット購入すればよかったのでは? と思われた方もいらっしゃるかもしれない。確かにそれでもよかったのかもしれないけれど、私としては、大勢の人の評価よりも「自分にとってこれがいい」と思うテキストを選びたかったから。自分にとっての「よい」は、大勢の人と同じかもしれないし、逆に少数派かもしれない。どちらにしても「自分が内容に納得して」選びたかったので、何冊か内容の見比べをしたかった。ネットだと内容についてオススメポイントとしてはあがっていても、細かいところまで吟味するのは難しい。
 結果、このこだわりが本格的な勉強の開始を遅らせることにはなったけれど、私としては必要なこだわりだと思っている。

実践は好き、理論理屈が苦手。「何事も体当たり!」と思っていた私らしいといえば、私らしい。


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