
思い立って資格を取るまでのお話(4)
勉強を始める前のこと
下調べ
保育士資格を取りたい! と思ってはみたものの、さて、何をすればいいんだろう? といったことも何もわからないまま。いつもの私であれば、「取りたいけど、何をすればいいんだろう?」で終わり。思い描くだけ描いて行動に移さず、夢のままで忘れられていた。
ところがこのときの私はちがった。取りたいと思ってから、保育士に関するサイトをいくつか見始めた。これだけでも、今までの私とはずいぶん異なる本気度だったのだなと、今振り返ってみても思う。なぜ、最初からある程度本気になれたのかは、今でも本当に不明なままだ。あえて言うなら、「ずっと夢のまた夢でしかなかった目標に近づける!」という勢いが勝っていた、ということだろうか。
たどり着いたのは、一般社団法人全国保育士養成協議会のサイト。試験に関することなどを委託されている団体だ。ここでは試験に関することはもちろん、過去問題なども掲載されている。そこで、どんな科目を学ぶ必要があるのかを閲覧してみる。
科目数は9つ。保育原理、教育原理、社会的養護、児童家庭福祉(★)、社会福祉、保育の心理学、子どもの保健、子どもの食と栄養、保育実習理論。
科目名だけを見て、原理や実習理論はもちろん、社会福祉? 福祉というとお年寄りの、というイメージしかなかった私は、このときはなぜ福祉を学ぶ必要があるのかが疑問で、さらに福祉といえば「サービスが複雑で訳がわからない」という印象が、今でもある。
そういえば一緒に学童保育を辞めた同年齢の子が、今回の私のように試験を受けることで保育士資格を取ろうとしていたことを思い出した。今思えば、何で彼女のことを思い出さなかったんだろう! と悔やむところだが、彼女がかなり苦戦していたことも、同時に思い出した。そのときに彼女が言っていたのが、「とにかく範囲が広い!」こと。そのときの印象で大変なんだろうなと思い出したのと同時に、今子どもたちがお世話になっている先生は、学校で学んだにしろ自分で試験を受けたにしろ、こういった「大変な道」を通ってきていることには変わりないのだから、ますます尊敬の気もちがわいてきた。
そういえばあのとき、彼女はこんなことも言っていた。
「今回合格した科目は○年間は有効・・・」
何年かまでは思い出せなかったが、調べてみたところ3年間らしい。つまり計6回「ゆっくり時間をかけて」資格取得も可能だが、そのつどお金がかかると考えたら、可能な限り一発合格を狙うのがよさそうだ。
受験にあたっては、すでに取得している資格によっては受験を免除される科目がある。おや? と思い、サイトを見てみる。
一応大学卒業時に教員免許を取得しているので、今回受験に含まれている「教育原理」や「保育の心理学」あたりは、もしかしたら対象になるのではないか? と淡い期待を抱いた。何しろ教員免許を取得したのがずいぶん前だし、実はあまり成績もよくなかったので、免除科目であろうがもう一度勉強はし直すつもりではいた。問い合わせてみれば何か方法があったのかもはしれないが、かえって複雑になってしまうかと思い、問い合わせるのは断念した。
後々取り寄せた受験申請の手引きによると、科目免除になるのは幼稚園教諭免許状、または社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士の資格所有者とのことで(★2)、教員免許(高校)ではどのみち該当しなかった。つまり私はすべての科目において受験する必要があるらしい。
元より当初から全科目受験するつもりで勉強を進めていたので、このあたりの混乱はなかった。何科目であろうと取りたいなと思った以上は勉強する! もう勉強しないことは考えられない! 何でも受けて立つ!
(★) 2020(R2)年試験より、「子ども家庭福祉」に名称変更。以降、「子ども福祉家庭」での名称使用が多くなると思うが、同じものだと思っていただきたい。
(★2)令和4年までは、経過措置により改正前の教科目(旧カリキュラム)の内容にて修得・・・と取り寄せた手引きにはあったので、今後は細かい条件によっては免許・資格所持者でも免除になるかどうかは異なるのかもしれない。
自分の現在地
試験を受けるのに何を勉強するべきかは、とりあえずわかった。試験も年2回実施、筆記試験を突破しないことには、その先の実技試験に進めないこともわかった。この実技試験まで合格できて初めて、保育士試験合格。保育士を名乗る場合には、さらに登録手続きが必要なこともわかった。
私が認可外保育所で保育士と異なる名称だったのは、「保育士は資格を得て初めて名乗ることができる『名称独占資格』」であるからで、そのため無資格の私は保育士と名乗ることができなかったがゆえの措置だったのだろう(名称独占資格であることを知ったのは、「保育原理」を勉強していく過程で)。
とりあえずスタートダッシュに成功したところで、今度はそのスピードを維持しつつ走り続ける行程。科目ごとに勉強に取りかかることにした。
ところがこのときはまだ、取りたいと思ったばかりだったこともあり、どこかで「本当に保育士資格をとりたいの?」「勢いで言ってるだけじゃない?」と自分を疑っていた。まず、テキストも何もない。いくら自学自習で、できるだけお金をかけずにと思っていても、テキストも何もなしで勉強ができるとはさすがに思ってはいない。
そこで私が思い出したのは、下のきょうだいのこと。下のきょうだいは、保育士ではない名称独占の某国家資格を取得。今も、この資格を活かした仕事をしている。
このきょうだいが、実際こんなことを話していたのを思い出した。
「模擬試験を受けた」
養成機関としての学校に入学してから間もないころの話だ。
「模擬試験たって、まだ入学してそんなに経たないのに? 問題解けたの?」
と尋ねると、
「うん、みんな解けないよ。当たり前。だけど、今は何もわからないのがだんだんわかるようになるからっていう意味らしい」
その後も実際に一定間隔で模擬試験はあったようで、その対策のおかげかはわからないが、下のきょうだいは卒業後の国家試験に一発で合格することができた(もちろん下のきょうだいの努力もある)。
この話を思い出した私は、下のきょうだいのマネをした。今何もわからない状態で保育士試験の筆記9科目すべてを解いてみたら、一体どのぐらい点数が取れるのだろう?
1問5点配点。9科目のうち、7科目は全20問(100点満点)。このうち6割だから12問以上正答(60点以上)で合格。「教育原理」と「社会的養護」は全10問ずつ(50点満点)だから、6問以上正答(30点以上)で合格。
厄介なのは、6割到達は「全科目の」ではなく「科目ごとに」6割正答でないと合格とならないこと。「科目Aが苦手だから科目Bで点数を稼ごう」ができない。さらに「教育原理」と「社会的養護」は2科目セット。この場合のセットとは、「2つあわせて100点」ではなく、「2科目同時に合格点に達していること」。片方が合格点に到達していても、残りの片方が合格点に達していなければ、どちらも不合格となる。
ひとまず全国保育士養成協議会のサイトから、平成31年度の過去問題を解いてみることにした。もちろん最初から合格点を取ろうとは思っていない。そのときの結果が、これだ。

科目名の後ろについている青系色の丸数字は正答できた問題数。黄色系の丸数字は点数に直した時の数字。この後も私は基本的に「正答問題数」でカウントした(理由は特にない)。
「子どもの食と栄養」と「保育実習理論」の分母が20に満ちていないのは、著作権の関係でネット上では閲覧できない問題があったため。別の年度の過去問題であっても、たとえば著書を引用した場面などではこういった状況が見られる。
試験そのものは5択のうち1つを選択するマークシート方式なのだが、自分の得手・不得手を見事にあらわした結果に、「まあね、何もわかんないもん。そうですよね~」と納得した。意外だったのは「子どもの食と栄養」でも合格点を取れていたこと。「保育実習理論」は音楽の問題が割と得意なのもあって、こちらは何となく手ごたえがあった。
選択式だからまぐれで当たっているものもあるとは言え、いくらなんでも「児童家庭福祉」の正答数2、「保育の心理学」の4は、呆れて笑うしかなかった。過去に教育心理学の中で発達に関することは触れたはずなのに。
この、正答数2であったり、昔やったはずのことをきれいさっぱり忘れているのが、「現時点での私」ということを知れた。ここから勉強を進めていく過程で、この数字を上昇させ、試験当日にはこの情けない数字を12(もしくは6)以上にもっていかなければいけない。今が底辺なら、あとは上昇するだけ。逆に楽しみとやる気が沸いてきた。