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[要旨]

飯田屋では、よりよい品ぞろえのために、従業員全員をバイヤーにしました。さらに、実際にバイヤーとして行動してもらうために、一定の金額を自由に使える権限を委譲しています。このように、実際に権限を与えることで、従業員はより難易度の高い活動に挑むことができ、能力を高めることになります。


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今回も、かっぱ橋道具街の料理道具専門店の飯田屋の社長、飯田結太さんのご著書、「浅草かっぱ橋商店街リアル店舗の奇蹟」を読んで、私が注目したことについて述べたいと思います。飯田屋では、他店にはない商品を敢えてそろえる方針を、さらに深めるために、従業員全員をバイヤーにし、仕入の権限を与えるようにしたそうです。ところが、権限を委譲しただけでは、直ちに、その権限を使ってもらえるようにはならなかったそうです。

そこで、飯田さんは、アルバイトは300万円、正社員は500万円、役職者には2,000万円という具体的な金額を、顧客のためになら何に使ってもいいということにしたそうです。そうすることで、徐々に、数十万円の仕入れをするようになったそうです。頭では、「お金を使って失敗しても、その責任は問われない」と分かっていても、「もし、100万円使って効果がなかったらどうしよう」と逡巡してしまうことが多いでしょう。でも、それを変えるためには「権限委譲」という手法が効果的なのだと思います。

ちなみに、これは、リッツカールトンホテルでも行われていることは有名です。リッツの従業員は、顧客満足のために、1日2,000ドルまで使う権限を与えられていますが、これは、顧客によろこんでもらうということよりも、従業員が顧客満足のためにどうすればよいかを考えたり、実際に行動したりしてもらうことが真の目的のようです。

上司から、「お客さまの満足を最優先して行動しましょう」と言われるだけで、具体的な権限も与えられなければ、従業員も、実際には、顧客に愛想を良くして接することくらいしかできないでしょう。そうであれば、従業員のやれることは限定的であり、能力を高めることもできないのは当然です。具体的な権限を与えることで、はじめて、より難易度の高いことに挑むことができ、能力も高めることができます。

このことも、当然のことなのですが、実際に権限を与える経営者も、従業員に権限を与えることは、少し怖いと感じるかもしれません。また、従業員も、権限を与えられても、それを行使することを怖いと感じることが多いでしょう。よって、それを実際に実行に移せるかどうか、そして、従業員に、権限を行使するよう上手に鼓舞できるかどうかに、経営者としての能力の差が現れるのではないでしょうか?

2021/12/22 No.1834

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