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[要旨]

ドン・キホーテ創業者の安田隆夫さんは、「ビジョナリーカンパニー」を読み、自社もビジョナリーカンパニーになろうと考えたそうです。その結果、自社の企業理念を制定し、それを自社の真のCEOと位置づけたそうです。そして、それに従って、自らの勇退を決めたそうです。

[本文]

今回も、前回に引き続き、ドン・キホーテ創業者の安田隆夫さんのご著書、「安売り王一代-私の『ドン・キホーテ』人生」を読んで気づいたことをご紹介します。「2010年秋頃、私は、たまたま、『ビジョナリーカンパニー』(ジェームズ・C・コリンズ)を読み、これまでにないような、深い共感と共鳴を覚えた。(中略)同書は長期にわたって繁栄し続ける企業(ビジョナリーカンパニー)の共通項は何かという疑問を、予断も偏見もなく、いわば、自然科学的なアプローチによって明らかにした、類い稀なる良書である。

中でも、ビジョナリーカンパニー最大の共通項は、「ビジョンと理念に基づく経営をしており、カリスマ経営者を必要としていない」という点に尽きるだろう。(中略)私は強い危機感を抱き、まずは当社らしい企業理念を編纂しようと決意した。それが『源流』である」(161ページ)「源流」は、記述の通り、ドン・キホーテの企業理念が書かれているものですが、部外者は読むことができません。

しかし、その一部が、「のほほん」さんという方のブログに載っていました。(ご参考→ https://bit.ly/3ziMKio )本題からそれますが、「源流」の中で、私は、部下への接し方について書かれている部分がとても印象に残っています。「部下の真摯な意見や主張、あるいは懇願等に聞く耳を持たず、部下の話を途中で遮り、一方的なやり方や命令を押し通そうとするだけの上司は、そもそも権限委譲を旨とする当社の上司たる資格はない」

安田さんは、従業員の方をとても大切な存在と考えておられるようですが、ここにそれが現れていると感じました。話をもどして、2015年2月に開催されたドンキホーテホールディングス(現在のパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)の中間決算発表の時、安田さんは引退を表明したそうです。「当社のCEOは、後任の大原孝治へとバトンタッチしたが、それは、会社法上のCEO交代に過ぎない。当社には、より上位の、真のCEOとも言うべきものが存在する、それが企業理念集『源流』だ。(中略)

ちなみに、『源流』の中にある『次世代リーダーの心得12箇条』の第5条に、『自分の権限を自身で剝奪し、部下に与える』とある。この条文の適用範囲に例外はないので、私自身も粛々とそれに従って勇退したということだ。(中略)冒頭でも触れたが、『老害』の張本人になるなど真っ平御免で、そんな自分の姿を想像するだけでもぞっとする」(230ページ)前回は、「ドンキは、モノ(商品)ではなく、”流通”を売っている」と説明しましたが、私は、ドンキの経営品質を高めているものは、企業理念を真のCEOとする安田さんの考え方にあると考えています。

2022/6/6 No.2000

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