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透明化で問題を問題のまま放置しない

[要旨]

ミスターミニットの元社長の迫俊亮さんは、同社社長時代、社内に多くのリーダーを育成し、権限委譲を行った後、社内のあらゆる層の会議の議事録を、ほぼすべて公開したそうです。これにより、従業員が問題を指摘しても、「スルーされた」と落胆させず、問題可決のための活動を継続させることを狙ったそうです。

[本文]

今回も、前回に引き続き、迫俊亮さんのご著書、「やる気を引き出し、人を動かすリーダーの現場力」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、迫さんがミスターミニットの社長だったとき、権限をできるだけ現場に置くようにすることで、活躍する従業員がたくさん現れましたが、それは、部下の方たちが、「自分が実践する仕事は自分が決めたものである」と考え、大きな納得感を得ることができたからであるということを説明しました。

これに続いて、迫さんは、組織の透明性を高めることが大切ということを述べておられます。「不透明な組織には、不信感が募る。ミスターミニットでも、2016年度から、人事などのセンシティブな情報以外、すべての会議の議事録を公開、共有に踏み切った。取締役会で、どんなことが話し合われたのか、広島エリアの現場社員も知ることができるし、逆に、広島エリアの店長会議でどんな話がでたのか--新人の誰々がこんないいことをして評価されたという話も、小さなクレームも--本社の人間も知ることとができる。

僕は、いまのところ、すべての議事録に目を通している。これは、組織に透明さを出すという目的と同時に、『問題を問題のまま放置しない』ためのものでもある。議事録を共有することで、そこで上がってきた問題に、適切な策が講じられたか、その結果は検証されたのか、解決されたのかを可視化できるのだ。僕は、現場の議事録によって把握できた問題点をうやむやにしないよう、すべてリスト化している。

『ある部材の品質が落ちている』、『このエリアでは新人の離職率が高い』、『新しいポスターへの評判が悪い』といった問題点に対し、いつまでにどんな対策を施すのか明示し、進歩もすべて記す。すぐに手が打てないものも、その理由を書く。もちろん、このリストは共有する。大切なのは、現場の問題点に対して、経営がきちんとフィードバックすること、そして、それがみんなから『見える』こと。『せっかく声を上げたのにスルーされた』と落胆させないためにも、問題解決のサイクルを回すためにも、議事録の共有化は不可欠だ」(179ページ)

迫さんのご指摘しておられるように、会社の活動状況を透明化することは望ましいことであると、多くの経営者の方もお考えになると思います。その一方で、ほぼ100%の透明化を実践することは、現実的に難しい面もあと考える方も多いと思います。私も、従業員の方のビジネスパーソンとしての成熟度が、ある程度高い状態でなければ、透明化することによって負の影響が出る可能性があると思います。

したがって、直ちに透明化を進めることが難しいという場合は、1か月毎、または、3か月毎に、KPIの達成状況を公表するということで、従業員の方のモラールを向上させることができると、私は考えています。すべての従業員の方は、何らかのKPIに関わる活動をしていますので、定期的にKPIの進捗状況を見てもらうことで、活動への関心を高めてもらうことができます。

もちろん、KPIは、単に公表すればよいという訳ではなく、事業年度の開始までに、会社全体の戦略から鑑みた目標を設定したり、定期的な公表をする際に、経営者からフィードバックや助言も行うことが求められます。とはいえ、これは、もともと、競争力を高めるために、経営者が求められる活動でもあることから、経営者にとって負担となる活動ではなく、基本的な活動として取り組むものでもあると、私は考えています。そして、こういった活動が定着していけば、ミスターミニットのように、議事録の透明化を実施しても問題が起きない会社になっていくと思います。

2023/10/21 No.2502

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