日本のビックマック指数は安すぎ?
[要旨]
2021年6月の日本のビックマック指数は3.55ドルであるのに対し、米国のそれは5.65ドルであり、日本のビックマックの価格は、米国の約63%しかありません。これは、日本国通貨の購買力が低いのではなく、日本の物価が低いことに原因があると考えられます。
[本文]
一橋大学の野口悠紀雄名誉教授が、ビックマック指数について、プレジデントオンラインに寄稿していました。ビックマック指数は、多くの方がご存知のとおり、英国の経済誌のエコノミストが、各国のビックマックの価格を調査し、米国のビックマックの価格を基準として比較して、それぞれの国の通貨の購買力を計ろうとするものです。ちなみに、本題とはそれますが、野口教授は、現在の日本のビックマック指数は低く、それは、アベノミクスによって円安になったからだと指摘しています。
私は、これについては、間違った指摘だと思います。なぜなら、2012年6月の日本のビックマック指数が4.09ドルで、米国の4.33と近かったときがありますが、その時の日本国通貨の外国為替相場は、1ドル=78.22円だったからです。円高であることが、そのことだけで直ちに問題であるとは言えませんが、当時は、円高によって、中小企業が大幅なコストダウンを迫られ、大きな社会問題となっていました。
このようなことを考えると、当時が望ましい状態であると考えることは、適当ではないと言えます。また、確かに、最近の円安も問題ですが、これは、日本国政府の政策というよりも、米国経済が良好で、金利が上昇してきたことが原因です。行き過ぎた円安は是正すべきですが、その原因が日本国政府の政策にあると考えることは誤りでしょう。
話を戻して、2021年6月の日本のビックマック指数は3.55ドルであるのに対し、米国のそれは5.65ドルです。すなわち、日本のビックマックの価格は、米国の約63%ということです。これは、日本国通貨の購買力が低いからと考えるべきでしょうか?私は、日本の物価が低いことに原因があるからだと思っています。
とはいえ、日本国通貨の購買力が低いことと、日本国内の物価が低いことは、どう違うのかと言うことは、なかなかうまく説明できません。ただ、例えば、ビックマックを販売しているマクドナルドが属する外食産業は、競争が激化していて、なかなか値上げできないから、日本でのビックマック指数は低いままになっていると、私は考えています。
2022/5/21 No.1984