見出し画像

[要旨]

税理士の児玉尚彦さんによれば、売上高が年率15%以上で成長する会社は、融資を受けなければ資金不足になるそうです。したがって、ビジネスチャンスを逃さないようにするためにも、売上が伸びている会社は、迅速に会計取引を記録したり、管理会計を導入したりして、銀行からの支援を受けやすいような体制を整備することが大切です。

[本文]

今回も、前回に引き続き、税理士の児玉尚彦さんのご著書、「会社のお金はどこへ消えた?-“キャッシュバランス・フロー”でお金を呼び込む59の鉄則」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。児玉さんによれば、融資を受けない場合、会社の売上は、年15%以上は成長はできないということを述べておられます。「私がこれまでにシミュレーションした結果では、業種にもよりますが、通常の運転資金と設備投資が必要な会社の場合、自己資金だけでは年15%の成長が限界です。

それ以上のスピードで成長しようとすると、稼いだお金よりも、運転資金と設備投資に喰われるお金の方が大きくなるため、資金ショートする現象が発生してしまうからです。商売を長くやっている会社は、この、“成長率15%の法則”を経験で理解していますが、創業期から成長期に移行したばかりの会社は、このことを知らずに、お金の壁にぶち当たります。急激に成長した会社が、売上と利益を伸ばしながら、黒字倒産してしまうのは、お金が足りなくなる速さを予測できなかったことが原因です。

この成長期においては、お金は休む間がないほど、忙しく流れるので、会社の経理は本当に気が抜けません。『社長が次から次へと新しいことを決めてくるので、お金の工面がたいへんです』という話を、経理社員からよく聞きます。社長としても、商品やサービスのライフサイクルが年々短くなっていますから、タイミングを逃すと、成長のチャンスを逃してしまうので、即断即決を迫られる結果、その分のお金がたいへんになっていきます。こうして、上昇局面にある会社は、不足するお金をなんとかかき集めながら、成長していくのです」(248ページ)

私は、児玉さんほど正確に計算はしていませんが、売上が年率10%以上増加する会社は、融資を受けられなければ、事業が停止してしまうと感じています。というのも、実際に、引き合いがきているにもかかわらず、融資を受けることができないために、新たな受注を受けることができないという会社を何社か見てきました。ビジネスチャンスを逃すということは、とてももったいないことです。では、なぜ、引き合いが来ている会社が、銀行から融資を受けられなかったのかというと、銀行が求める財務データを提出できなかったからです。

規模が小さな会社は、税務申告するための最低限の会計記録しかしていないことが多く、商品別、顧客別、地域別といった、経営判断(融資判断)に必要な情報を得ることができないと、銀行は融資の妥当性を判断することができず、融資の申し出を断ることになってしまいます。また、そういった成長してる会社は、融資が必要になると分かってから、融資が必要になる日まの期間が短いので、なおさら、銀行は、融資に消極的になります。その一方で、経営者の方は、仕事が忙しいから、財務データを集めるための労力にあまり時間を割くことができないと考えがちです。

でも、そのような状況が、銀行からの支援を受けることができないことになる、すなわち、それがボトルネックになるので、繰り返しになりますが、ビジネスチャンスを逃すというもったいない状況になります。さらに、現在は、銀行の職員数が減ってきており、1つの案件にかけてもらえる時間は減りつつありますので、きちんとした財務データを提出できるかどうかは、ますます重要になりつつあります。したがって、ビジネスチャンスを逃さないようにするためにも、経営者の方は、事業活動だけに気をとらわれることなく、迅速に会計記録を行い、さらに、管理会計を導入することは欠かせません。

2022/12/31 No.2208

いいなと思ったら応援しよう!