平等感がメンバーの士気を高める
[要旨]
青学陸上部の原監督は、あらかじめエースの選手を決めず、全員が同じスタートラインから切磋琢磨できるようにしています。その結果、みんなに認めらたエースが育つことになります。こうすることで、お互いに納得することができ、メンバーの士気が高まることから、よい成果を得ることにつながります。
[本文]
青山学院大学陸上競技部監督の原晋さんのご著書、「フツーの会社員だった僕が、青山学院大学を箱根駅伝優勝に導いた47の言葉」を拝読しました。原さんは、人材育成における平等感の大切さについて述べておられます。「チームを強くするには、エースという存在が必要です。(中略)では、エースを育てるにはどうすればよいか、私は、エースをつくるには、『平等感』が不可欠だと考えています。それは、決して仲良しグループをつくろうとしているのではありません。選手が同じスタートラインから切磋琢磨できる環境を整えるということです。
そこで、一生懸命に努力するそれぞれの姿を通して、結果的に生まれてくるのがエースといわれる選手だと思います。そうやって出てきたエースは、部員全員に認められる存在になります。例えば、4人の同期がいて、『大学4年になったときには、箱根駅伝で優勝しよう』と切磋琢磨して、その中のひとりがエースと呼べる力を発揮し始めたら、他の3人は、『あいつがエースだな』と認めるはずです。そういうエースが真ん中に立つチームには、本当の強さがあると思います」(134ページ)
平等感がある、すなわち、エースになる機会が誰にも与えられていることで、原さんの指摘するように、チームメンバーの全員が努力するようになり、チーム全体の成績も向上します。この原さんのご指摘は、多くの方が容易に理解されると思いますが、やはり、これも実践することは、頭で考えるほど簡単ではないようです。というのは、平等感をもってもらうためには、透明性が必要であり、その透明性を高め、維持することは、案外、難しいようです。
具体的には、一般の会社の場合、人事考課制度を制定したり、キャリアパスなどを作成した上で、これらをきちんと実行しなければなりません。特に、人事考課は、どれだけ厳格に実施しても、評価される従業員の方の側には、どうしても、100%の公平感を持ってもらうことは難しいようです。だからこそ、高い透明性を維持できるように、経営者の方は努力しなければなりません。でも、このような透明性の確保への努力は、従業員の方の士気を高め、より大きな成果を得ることにつながります。従業員の方のやる気を引き出すには、こういった、透明性を維持するという環境整備も、重要な要素となっています。
2022/8/7 No.2062
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