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組織的活動には心根のよい人材が必要

[要旨]

会社の中で成績が優秀な人がいたとしても、そのような人の人間性が悪いと、組織的な活動はできなくなってしまいます。しかし、非凡な能力を持たない人だけでも、お互いに協調し合いながら業績を高めていこうと努力することによって、全体としてよい成果をえることができます。したがって、経営者の方は、組織内の協調性を生み出すための働きかけをする役割が求められています。


[本文]

青山学院大学陸上競技部監督の原晋さんのご著書、「フツーの会社員だった僕が、青山学院大学を箱根駅伝優勝に導いた47の言葉」を拝読しました。原さんは、組織的に力を発揮するには、協調性が大切であると述べておられます。「企業でも抜群の成績を残す一人の営業マンが、その実績を振りかざし、『俺はトップの成績を残している、だから、何も言われる筋合いはない』と、組織にまったく融合しなかったらどうなるでしょうか?最終的に組織がぐちゃぐちゃになるのは目に見えています。

そういう自分のことしか考えられない人のことを、私は、『心根の悪いヤツ』と表現します。それよりも、ほかの人と協調しながら行動できる、『心根のいいヤツ』をとる方が、短期的な伸びは小さくても、長い目で見ると、組織全体の力を伸ばすことにつながるのです。また、仮にエースが抜けたとしても、『心根のいいヤツ』が揃う組織は、考え方次第で強化できるのです。成績がいいだけで心根が悪い営業マンがいなくても、残りの心根がいい営業マンが少しずつ成績をあげれば、その分をカバーできるからです。

駅伝でも、心根の悪いスーパーエースがいなくても、心根が良く真面目に練習に取り組む選手が、少しずつタイムを縮めれば、合計タイムを短縮できます。例えば、エースが抜けて10秒遅くなったとしても、10区あるなら、それぞれの区で1秒ずつタイムを縮めていけば、10秒のロスはカバーできます。それは、決して不可能な数字ではありません。私は3年目以降、その考え方を基本にしてチームを強化してきました。組織力やチーム力を押し上げていくのは、『コツコツと努力できる心根の良い人間』だと、私は強く信じています」(170ページ)

原さんも、一度、実力があるものの、身勝手な選手をスカウトして、チームの成績を下げてしまうという失敗をしていますが、その後、引用した内容のように、チーム内の協調性を発揮して、常勝チームをつくりました。そして、この組織の構成員の協調性を活用して、組織としての成果を高めるという論理は、多くの方に容易に理解されると思うのですが、これも、実践することは、頭で考えるほど容易ではないと、私は感じています。

その理由のひとつは、組織内の協調性を強める方法は、具体的にどうすればよいのかがわからなかったり、また、わかったとしても、それをうまく実践できる経験を持った経営者は少ないからだと思います。私自身も、これが決め手という方法を明示することはできないのですが、QCサークルや、5S活動を行うことによって、協調性は涵養されていくと考えています。しかし、このような活動は、日々の仕事をこなすだけでたいへんで、そこまでなかなか手が回らないという会社も多いと思います。

2つ目は、協調性による成果は、一朝一夕では現れないことです。現在は競争環境が激化していることから、経営者としては、1日でも早く成果を得ようと考え、どうしても「エース」のような人材に頼りたくなってしまうのではないでしょうか?ただ、そのような付け焼刃的な対応だけでは、早晩、競争から脱落してしまいます。やはり、組織の土台を固め、真に競争力を強くしていくためには、1日でも早く、協調性を高めるための活動に取り組むことが求められていると、私は考えています。

2022/8/6 No.2061

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