見出し画像

戦略策定の経験のある経営者は少ない?

[要旨]

経営者の方の中には、事業活動の道筋である経営戦略を考え出すことは、あまり、得意でない方も多いようです。そこで、経営戦略を策定した経験の少ない経営者の方は、環境分析や、それに基づく戦略策定というプロセスを、専門家の支援を受けながら身に着けていくことをお薦めします。


[本文]

前回、経営戦略は、マクロ的、かつ、長期的視点で検討することであるころから、経営者の方が日常の事業活動に注意が向いていると、マクロ的、長期的視点を持ちにくく、経営戦略には、なかなか、考えが至らないと述べました。今回は、これに関し、もう少し、私が感じていることを述べたいと思います。楠木教授も、「ストーリーとしての競争戦略」の中で述べておられましたが、経営戦略とは、競争に勝ち抜く方法の道筋を示すものです。

これについては、ほとんどの人がその通りだと考えると思いますが、会社で開かれる会議では、「道筋」について述べられることが少ないということは、これも、楠木教授が同書の中で言及しています。繰り返しになりますが、目標や実施体制を明確にすると、目標達成が近づく感じがしますが、事業活動を航海に例えると、目標は目的地であり、実施体制は船の中での役割分担なので、どちらも道筋ではありません。

道筋とは、どういう航路で目的地に行くのか、時間をかけて安全な航路を進むのか、危険な場所であっても最短距離で進むのかということを示すものですので、目的地でも船の中の役割分担でもありません。では、なぜ、事業活動の中で、なかなか、道筋について言及されないのかというと、これも、私が、前回、事業活動を俯瞰している経営者が少ないからと述べましたが、さらに、道筋を明確にすることは、意外と難しいという事情があるようです。これについては、上から目線で恐縮ですが、経営者の方の多くは、経営戦略に向き合った経験が少ないということが実態だと思っています。

そのような状態になってしまう要因は、ひとつではないと思いますが、(1)中小企業の場合、個人的なつながりで事業を営むことが多く、普段は、経営戦略を意識する必要性があまり多くない、(2)「地域密着」、「匠の技」、「こだわりの味」、「顧客第一」などのスローガンを掲げれば、自社の独自性を打ち出せると思い込んでしまう、という要因があると思います。しかし、経営戦略は、組織的活動を行うには、重要な要素です。もし、経営戦略がなければ、従業員が自己流で仕事をすることになり、会社としてのまとまりがなくなります。

とはいえ、直ちに、自社に合った経営戦略を考え、実践するということは、容易ではないことも確かです。なぜかといえば、例えば、自社に合わせた経営戦略を考えようとしても、自社の強み(内部環境)を調べるための、自社のデータが揃っていないという会社は珍しくないからです。したがって、経営戦略を考案し、組織的な活動をしようとする会社は、データ収集や戦略策定会議などのプロセスを、専門家の支援を受けながら経験し、経営戦略を考え出せる能力を身に着けていく必要があるでしょう。

ここまでの内容はちょっと大げさのように思われるかもしれませんが、経営者は部下に目標を与えるだけで、部下はそれを達成するために徒手空拳で活動するという状態を続けていては、事業活動は、従業員の方の個人のスキルに依存することになり、まとまりのない活動しかできないことから、ライバルとの競争において不利になってしまうことは間違いないと思います。

いいなと思ったら応援しよう!