見出し画像

持ち帰り残業に対する経営的な責任

[要旨]

パナソニックは、従業員が持ち帰り残業を行い、その結果、うつ病になって自殺したことについて、裁判を経ずに、遺族へ謝罪し、和解しました。持ち帰り残業を放置したことは、法律的な責任もありますが、経営的な観点からも事業拡大の妨げになるものであり、経営者は、単に従業員に負担を押し付けることなく、持ち帰り残業が起きないような対策を講じることが必要です。


[本文]

日本経済新聞に、パナソニックの従業員の持ち帰り残業に関する記事がありました。記事によれば、「2019年に、仕事の過負荷で持ち帰り残業をしていた、パナソニック従業員(当時43)が、うつ病を発症し、自殺したことについて、同社は、7日、持ち帰り残業が自殺の原因になったとして、裁判を経ずに、『安全配慮義務を怠った』と認めて、遺族に謝罪、和解したと公表した」とあります。法律上のことは、私は専門外なので、ここでは述べませんが、経営的な観点からは、従業員の方がうつ病になるまで持ち帰り残業をさせていたことは、見過ごすことができないことだと思います。

これについて、パナソニックは、裁判を経ずに和解に応じていることから、その重大さを認めているということでしょう。というのも、パナソニックは、ホームページに、「弊社が社会からお預かりした貴重な人材を失ってしまったことは、決して償いきれるものではありませんが、本事案発生の原因を明確にし、弊社として再発防止に向けた取り組みを徹底して推進してまいります」と記載し、法律上の責任だけではなく、社会的な責任を認めています。

しかしながら、持ち帰り残業を見てみぬふりをしている会社は少なくないということも事実でしょう。確かに、現在は、経営環境が厳しく、経営者につきつけられる課題も難しいものであるということも事実です。しかし、それを解決するために、単に従業員に矛盾を押し付けるだけであれば、経営者の役割を果たしているとは言えません。このパナソニックの事例は、多くの経営者の方に、その役割とはどういうものなのかを考えてもらうためのきっかけになるものと、私は改めて感じました。

2021/12/11 No.1823

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?