[要旨]
京都橘高校吹奏楽部の前顧問の、田中さんは、直接、自らが指導することはせず、部長を通して、先輩部員が後輩部員を指導するという、「弱弱指導」を実践した結果、部員には自主性が生がまれ、自立的に行動していった結果、活動の成果も向上しました。これは、中小企業の組織改善にも応用できると思います。
[本文]
京都橘高校吹奏楽部の前顧問の、田中宏幸さんのご著書、「オレンジの悪魔は教えずに育てるやる気と可能性を120%引き出す奇跡の指導法」を読みました。京都橘高校は、全日本マーチングコンテスト全国大会の常連校で、マーチング関係者の間ではとても注目されている学校のようです。私も、同校のことは気になっていたのですが、この本で、田中先生の指導法がよく理解できました。中でも、私が特に注目した手法は、「弱弱指導」です。
「私の指針については、総務(部長と2人の副部長)に、ドラムメジャー(マーチングバンドのリーダー)を加えた4名、言ってみれば、京都橘の『役員』にそれとなく投げ掛けて、彼女たちの言葉で全体に伝えてもらう体制をつくって行きました。吹奏楽部のリーダーである総務も、マーチングバンドのリーダーであるドラムメジャーも、たいへんな役割です。それを担う4名は、しっかりしているとはいえ、生徒ですから完璧ではない、言ってみれば、『弱い人』です。
でも、教師という『強い人』である私が、生徒という『弱い人』たち全体を、直接指導するよりも、『ちょっと弱い人=役員』が、『ものすごく弱い人=他のメンバー』を指導する方が伝わりやすい。また、役員も弱い人である以上、いきなり指導はできません。『どうすればいいか』を役員4名であらためて相談したり、3年生全員で考えたりせざるをえず、結果として、全員に自主性が生まれます。自立的に行動し、成長させることもできます」
田中さんのこの指導法は、高等学校の吹奏楽部に対して行ったものであるとはいえ、会社の従業員育成にも応用できるものではないかと思いました。すなわち、小集団活動への権限委譲によって、一般の会社でも、「弱弱指導」を実践できると思います。しかし、これは、頭で考えるほど、実践することは容易ではないようです。田中先生は、あえて、吹奏楽部部員には、直接、指導することはせず、すべて、総務(部長、副部長、ドラムメジャー)を通して指導することに徹していたそうです。
また、田中先生は、「自分は水のような存在に徹した」とも書いておられます。これは、「コーヒーも紅茶も、水を温めてお湯にして淹れているけれど、コーヒーや紅茶を飲むときに、水を意識して飲む人はあまりいない」ということから、必要なものなのに目立たない存在であるということのようです。この、縁の下の力持ちに徹しようとすることも、易しいようでなかなか難しいようです。ただ、自立的に行動してもらうための、弱弱指導は、ぜひ、多くの中小企業経営者の方に、実践を検討していただきたいと思います。
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