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ピンチになっても支えてもらえるか

[要旨]

銀行との融資取引については、個別の融資申請に応じてもらえるかどうかの前に、メインバンクが、自社がピンチになったときも支援を続けてくれるかどうかが重要です。メインバンクとそのような関係がなければ、安定的な融資を受けることができません。したがって、融資を受けている会社は、個別の融資申請よりも、定期的な業況の報告に注力することが大切です。

[本文]

前回の記事では、銀行は、6か月ごとに、融資相手の会社の業況や融資取引の状況に基づいて、その会社への取引方針を決めているので、融資が必要になった時でだけではなく、定期的に、自社の状況を銀行に報告することが、円滑な資金調達につながるということを説明しました。今回は、これを補足することで、メインバンク制度について、さらに深い説明をしたいと思います。前述の通り、初めての融資取引を申し込む場合でない限り、銀行の融資判断は、個別の融資申込を行う前に、ほぼ、決まっています。

ですから、銀行から円滑に融資を受けようとするときは、個別の申し込みのタイミングではなく、少なくとも、自社の決算書ができたタイミングや、できれば、決算期以外でも3か月ごとに、業況の報告をすることが大切です。さらに、そうした銀行への働きかけによって、もし、自社の業績が悪化したとき、メインバンクが自社を支援する方針を表明してもらうことを目指していくわけです。しかし、もし、自社が窮地に立つことになったにもかかわらず、メインバンクが自社を支援する方針を示してくれなければ、融資を受けている会社にとって、メインバンク制度の意義はなくなってしまいます。

なぜなら、メインバンク以外の銀行も、メインバンクの方針に倣うことがメインバンク制度なので、メインバンクが自社を支援しないという方針を示すことになれば、それ以外の銀行も、同じ方針を示すことになるでしょう。このような理由から、メインバンクとの取引は、特に重要ということが言えます。そこで、これも前述した通り、銀行へは定期的な業績の報告をすることが欠かせません。

ところが、中小企業経営者の方の中には、自社がピンチになったときに、メインバンクに支援してもらうことを意識して、銀行と接している方は、あまり多くないようです。もちろん、業歴が浅く、融資取引額が少ないときは、そこまで意識する必要は、それほど大きくないでしょう。しかし、事業を拡大していく意向があるのであれば、リスク管理の観点から、いざというときに頼ることができる銀行を確保しておくことは欠かせません。

このような関係ができていなければ、個別の融資を受け続けることができていたとしても、たまたま、何らかの事情で自社の業績が悪化した時、銀行は自社との融資取引を縮小しようとするでしょう。ところが、繰り返しになりますが、多くの中小企業経営者は、個別の融資申込のときだけ、銀行に説明に行くことしかしようとしません。その理由として考えられることは、銀行に業況を説明する労力を避けたいと考えていること、また、そもそも、自社の業績管理を行っておらず、銀行への説明する体制が整っていないことなどが考えられます。

ここで、「自社は、毎年、決算書を提出しているのだから、銀行は、融資相手の会社によりそって、説明する負担を減らしたり、また、決算書の提出だけで自社の状況を理解すべきだ」と考える方もいるかもしれません。これについては、詳しい説明は割愛しますが、決算書から得られる情報は、重要な部分をしめるものの、それだけでは、ピンチになったときに支えるかどうかを判断することは難しいと言えます。

ここまでをまとめると、自社が安定的に融資を受けることができるようにするためには、まず、メインバンクに、自社がピンチになったときでも支援を受けることができるような信頼関係を築くことです。このような関係を築いていれば、個別の融資申込も、容易になります。そして、定期的な業況報告を負担になるととらえず、大局的な観点で、銀行と接することが、自社の安定的な事業拡大の近道になると、私は考えています。

2023/9/10 No.2461

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