銀行取引が不慣れな会社は倒産しやすい
[要旨]
東京都内の信用金庫では、ゼロゼロ融資の利用者のうち、それで初めて融資取引を開始したという会社は、倒産する傾向が高いそうです。そのような会社の経営者は、金融機関との取引に不慣れで、事前に金融機関に相談をせず、むしろ、業況悪化は金融機関に知らせない方がよいと考えてしまうことが原因と考えることができます。
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11月10日に、帝国データバンク情報統括部情報編集課長の阿部成伸さんが、ダイヤモンドオンラインに、ゼロゼロ融資に関する記事を寄稿しておられました。この記事には、コロナ禍で倒産してしまう会社の共通点について、東京都内のある信用金庫職員の方のお話が紹介されていました。「新規先(それまでは融資取引がなく、ゼロゼロ融資を利用する時が、初めての融資取引となった会社)の倒産が目立っています。コロナ前から融資取引をしている事業者の多くは、ゼロゼロ融資や既存融資を問わず、返済が厳しくなったら相談に来ますので、(リスケジュールなどの)対応が可能です。
しかし、ゼロゼロ融資で取引が始まった事業者を見ると、事前に何の相談もなく、ある日、突然事業を停止し、弁護士から受任通知が送られてくるケースが多いです。相談してくれれば何とかなった先は多かったと思います。新規先の倒産が相次ぐ要因は、金融機関との取引経験や情報量に乏しく、『困ったら相談する』という発想がないことと考えます。コロナ融資が予定通り返済できない状況になったことを金融機関に知られたら大変だと考えていたのでしょう」
私も、この信用金庫の職員の方のお話については、共感できるところがあります。私が、東京都内の会社の経営者の方から、融資のご相談を受ける内容のいくつかは、銀行との接触が少ないために、融資を断られてしまったというものです。というのも、銀行が融資を断る理由のひとつには、会社の様子がよくわからないというものがあります。これについては、銀行に定期的に業況などの報告を行うことで、ほぼ、解消します。しかし、前述の信用金庫職員の方がしているように、銀行との取引について不慣れな経営者の方は、融資申込以外のことでは、銀行とは接触できないと考えてしまうのではないかと思います。
一方、銀行側は、融資の申し込みだけに限らず、自社の業況の報告などについても、関心をもって聞こうとするでしょう。むしろ、前述のように、業況が悪化してから融資申込をされるよりも、事前に会社の状況が分かっている方が、銀行としても対応をする余地が大きくなり、お互いの負担が少なくなるからです。もし、融資取引のある銀行に、普段、相談することがほとんどないという経営者の方は、自社がピンチに立った時に、業績の回復の機会を失わないためにも、定期的に銀行と接触するようにすることをお薦めします。
2022/11/22 No.2169