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フィージビリティ・スタディ

[要旨]

ネスレ日本の開発したネスカフェアンバサダーは、当初、事業所向けのコーヒーマシンを販売しようとしたものでしたが、フィージビリティ・スタディを通して、マシンは無料で提供し、コーヒー代でマシンの代金を回収する方法することで成功するに至りました。このように、フィージビリティ・スタディは、単なる試験販売ではなく、顧客の反応を取り入れながら競争力の強い商品を作る手法として効果があります。

[本文]

今回も、大阪ガスエネルギー・文化研究所の主席研究員の鈴木隆さんのご著書、「御社の商品が売れない本当の理由-『実践マーケティング』による解決」を読んで、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。前回は、マーケティング活動の最初の手順は市場調査ですが、それは、マーケティングの目的に沿ったものとすることが重要ということに説明しました。それに続いて、鈴木さんは、市場調査の方法のひとつである、フィージビリティ・スタディ(実現可能性調査)について、鈴木さんがネスレ日本の方からお聴きした、オフィス向けコーヒーマシンの事例をご紹介しておられます。

「オフィス向けのセットをつくって営業してみたところ、すでに自動販売機がある、わざわざ買ってまで置こうとは思わない、などといった反応が返ってきて、まったく売れませんでした。そうした中、2011年に東日本大震災のボランティアとして被災地を訪問した際、利用者の少ない集会所にマシンを設置したところ、住人たちの交流の輪が生まれていったのです。今度はマシンを無料で提供して、コーヒー代で回収することにし、試しにモニターサイトで50台限定の無料モニターを募集してみると、1週間で1,000件を超える応募がありました。さらに、広告費用の安い北海道でテレビCMを10日間流して、1,200件の申し込みが得られ、職場での運用がうまくいくことも確認できたので、2012年から現行のネスカフェアンバサダー方式を本格的に展開することになったのです」(83ページ)

私も、この本を読んで、ネスカフェアンバサダーは、フィージビリティスタディの結果、生まれた商品だったのだということを知りました。でも、フィージビリティスタディを行ったことから、競争力が強い商品になったのだと思います。そして、フィージビリティスタディは、単なる試験販売とは異なるようです。試験販売の場合、販売する商品は、試験の段階で、ほぼ、固まっていますが、フィージビリティスタディの場合、その過程を通して、商品、販売方法、標的顧客などが決まっていくようです。すなわち、フィージビリティスタディで開発された商品は、顧客の反応が色濃く反映されているということです。こういった市場調査も、マーケティング活動を、より強力にするものであると言えるでしょう。

2023/2/28 No.2267

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