21世紀は勝てる戦略に組織が従う時代
[要旨]
20世紀前半は、組織が戦略に従う時代であったようですが、20世紀後半は、戦略が組織に従う時代であったようです。そして、21世紀は、勝てる戦略に合わせて、組織を育成する時代になっていると思われます。
[本文]
先日、私が制作しているポッドキャスト番組で、事業部制組織について説明したのですが、今回は、それに関し、チャンドラーとアンゾフの、それぞれの学説について説明したいと思います。20世紀初頭の米国では、ゼネラルエレクトリック、ゼネラルモーターズ、デュポンなどが、事業部制組織を導入するようになりました。
その背景には、会社の事業規模が拡大していった結果、製品や地域によって、異なる課題を持つようになってきたことから、その課題を、それぞれの製品や地域ごとに事業部をつくり、各事業部に解決を委ねることのほうが、会社全体で課題解決に取り組むよりも効率的であったからという事情があったようです。このような会社組織の変遷について、米国の経営史を研究していたチャンドラーは、1962年に出版した著書、「Strategy and Structure」の中で、「組織は戦略に従う」と述べています。
これに対して、ロシア系アメリカ人の経営学者のアンゾフは、自身のロッキード社勤務時代の経験などから、組織の能力には限界があり、とることができる戦略は限定されるという考えに至ったようです。そして、これについて、1979年に出版した著書、「Strategic Management」の中で、「戦略は組織に従う」と述べています。
両氏の学説は真逆ではあるものの、両氏とも、事実に基づいた分析結果を述べているところが興味深いですね。強いて言えば、あまり複雑な戦略が必要でなかった20世紀前半は、戦略に合わせて組織をつくることができたけれども、20世紀後半からは、複雑な戦略が必要とされるようになってきたので、組織に合わせた戦略しかとれなくなってきたということなのだと思います。
では、21世紀前半のいまは、どちらということになるでしょうか?複雑な時代だから、戦略が組織に従う時代でしょうか?でも、私は、複雑な時代だからこそ、経営者は、強い組織を育成して、高度な戦略をとらなければならない時代になっていると思っています。
すなわち、経営者は、競争に勝ち抜くための戦略を実践できる、強い組織を育成する能力が問われる時代になっていると思います。とはいえ、私の考えが正しいかどうかは、もう少し後になってからでないと、分かりませんね。そして、何が正解かを決めるのは、いま、まさに、経営に取り組んでいる経営者の方たちであり、そこに経営者としての仕事の面白みもあると思います。