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資金繰表はなぜ作成されないのか(3)

[要旨]

融資申請時に資金繰表を提出していると、銀行は、資金繰表から、融資額の妥当性などを理解することができます。もし、資金繰表がなければ、聴き取りなどで、融資額の妥当性を検討しますが、口頭での説明では、十分な説明は難しくなります。したがって、融資に苦心している会社は、会計記録をきちんと行う体制を整え、資金繰表を提出できるようにすることが重要です。

[本文]

前回は、経営者の方の会計に関する意識が低く、会計記録に不備があったり、記録に時間を要していると、必要な情報がなかなか得られず、資金繰表も作成が困難になるということを説明しました。今回は、会計は銀行とのコミュニケーションツールであるということについて説明します。融資を受けている会社は、よく、銀行から資金繰表の提出を依頼されると思います。その理由は、資金繰表があれば、なぜ、いつ、いくら資金が不足し、いつそれを返済できるのかということを、直ちに銀行が把握できるからです。

もし、資金繰表を提出しない場合、銀行職員は、経営者の方からの聞き取りと、財務諸表から、前述の内容を把握しようとします。ただ、それでは正確な内容は把握できませんし、銀行職員のスキルが低いときは、申し出の内容が不詳であるとして、消極的にしか取り扱おうとしないでしょう。もちろん、資金繰表を提出しさえすれば、必ず融資を受けられるということではありません。融資の判断には、会社の業況や、事業の妥当性などの要素も判断材料になります。でも、資金繰表があれば、銀行の知りたい内容の約半分は伝わります。

したがって、銀行の融資方針が消極方針でない会社であれば、資金繰表を提出しさえすれば、すぐに融資に応じてもらえることになります。事実、私が、ご支援している会社の融資申請のときは、資金繰表を作成して提出しますが、そうすることで、必要融資額を説得力をもって説明できるので、円滑な融資承認につなげることができます。ここまでは、融資申請における、資金繰表の重要性について説明してきましたが、逆に言えば、資金繰表を作成していない会社は、銀行の知りたいことの半分を伝えることができていないということです。

ただ、業績が黒字であれば、資金繰表がなくても、ある程度は、銀行は要望に応じてくれますが、黒字額が少ない、または、赤字の会社は、資金繰表なしには、融資に応じてもらうことは、ますます、困難になります。ときどき、「銀行は、当社のことを理解せず、融資に応じてくれなかった」という不満を持つ経営者の方がいますが、その原因のひとつは、きちんとした資料を提出できないことである場合もあると思います。もし、そうであるとすれば、銀行に対して無理な要求をしているこということになると言えます。

もう少し厳しい言い方をすれば、資金繰表をはじめとした会計的な資料が作成できていなければ、経営者の方自身も、自社の財務状況を把握していないことになるので、その一方で、銀行に対しては自社のことを理解して欲しいと望むことは無理筋とも言えます。話を資金繰表にもどすと、融資申請には、資金繰表は欠かすことができない資料であるにもかかわらず、それを作成できない状態にしておくことは、銀行からの協力を得られにくい状態にしておくということでもあります。そのような会社が、融資を受けるときに苦心しているのであれば、会計処理をきちんと行う体制を整えることで、その労力は大幅に減少します。

2022/4/13 No.1946

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