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ビジネスの目的は社会貢献
[要旨]
株式会社識学の社長の安藤広大さんによれば、ネット上では、必死に働くことを否定する考え方を示す人が多いそうですが、自社の事業を成功されば、大きな雇用を生み、多くの人を豊かにすることができるので、その会社の経営者も人生の満足感が大きくなることから、現在は苦しくても、懸命に仕事に取り組むという姿勢は重要であるということです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、株式会社識学の社長の安藤広大さんのご著書、「とにかく仕組み化-人の上に立ち続けるための思考法」を読んで私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、安藤さんによれば、多くの会社では属人化が進んでおり、従業員たちは社内での人間関係に労力が割かれているので、従業員の士気や定着率を下げ、事業活動の競争力を弱めることになっているため、経営者は属人化をなくすよう仕組み化を進めることが求められているということについて説明しました。
これに続いて、安藤さんは、ビジネスパーソンは、社会的な貢献に価値を感じることが重要ということについて述べておられます。「ネット上で有名な話があります。『腕のいい釣り師』の話です。ある島に、腕のいい釣り師がいました。その的り師は、自分の家族だけが食ベられる魚を朝に釣りり、昼からは家族と過ごし、夜は友達と焚き火を囲み、歌をうたって生活しています。そこに、1人の投資家が現れて、こう言います。
『あなたは腕がいい、誰かにその技術を教えるベきだ』釣り師は『なせ?』という顔をしている。投資家は統けます。『その技術を教えて、たくさんの人を増やせば、もっとたくさんの魚が釣れます。その人たちで会社をつくり、隣に工場をつくることもできます。すると、たくさんのお金が手に入ります』釣り師は、『そうすると、何が起こるの?』と聞き返します。
『あなたは、一生、遊んで暮らせることができるようになります。仕事をする必要がなくなるのです。朝は好きな釣りをして、昼からは家族と過ごし、夜は友達と焚き火を囲み、歌をうたって生活できるようになるんです』釣り師は、『だったら、いまと同じじゃないか』と言いました。
さて、この話を読んで、どう思われたでしょうか。どんな解釈をしますか。ネット上では、必死に働くことを否定するための話として広まっています。あなたも、いっけん、釣り師の考えのほうがいいと思ったかもしれません。しかし、他の解釈もあると思うのです。会社として成功させたなら、大きな雇用を生み、たくさんの人をおいしい魚で喜ばせることができます。
人に釣りの技術を伝えることができたなら、他の人の成長にも貢献できます。部下は育ち、おいしい魚を通して社会貢献をしています。『いま遊んでいる人』と『あとで遊ぶ人』その違いだけではないはずです。人生の満足感が、まるで違うと思うのです。あなたはどのように考えるでしょうか。『あとで遊ぶ人』を軽視できないのではないでしょうか」(291ページ)
この安藤さんの考え方ですが、ビジネスパーソンの方の中でも、多くの方は、安藤さんと同じよううに考えるのではないかと思います。その一方で、「社会貢献はしたいけれど、その前に、きょう自分食べるための稼ぎを得るだけで精一杯だ」という方も少なくないと思います。私自身もそれは実感しているので、起業して間もないころは、自分自身を中心に考えなければならないことも現実だと思います。しかし、それが続くだけでは虚無感ばかりを感じて、事業活動に身が入らないのではないかと思います。
マズローの欲求5段階説に当てはめれば、社会的欲求だけでは満足できず、より高い承認欲求や自己実現欲求を感じるのだと思います。だからこそ、もし、現時点では自分のために事業をしなければならないとしても、遠くない将来は社会に貢献したいと考えながら仕事に臨むことは大切だと思います。そして、私は、自分がそう感じる時は、稲盛和夫さんの「動機善なりや、私心なかりしか」という言葉を思い出しています。
稲盛さんは、第二電電(現在のKDDI)を設立しようとしたとき、「日本の電話料金を安くすることは、日本の社会のためになることであり、決して、私心で事業を始めるのではない」と考えたそうです。恐らく、稲盛さんも、第二電電を設立するときは迷いがあったのだと思いますが、社会に貢献する事業であれば成功するであろうと、ご自身を奮い立たせたのだと思います。
翻って、私の事業は第二電電ほど社会に大きな営業は与えませんが、事業活動に会計を活かす会社が増えれば、精度の高い経営をする会社が日本で活躍することになり、日本全体の経済活動を活性化すると考えています。私自身の事業活動は極めて小さいものですが、こう考えることで、決して自分のためだけに行っているわけではないと考えることができるようになり、前向きに事業に臨むことができるようになりました。
2025/1/15 No.2954