銀行はなぜ『役員貸付金』を嫌うのか?
[要旨]
銀行が、役員貸付金のある会社を評価しない理由は、(1)経理処理が不正確である可能性が高い、(2)役員貸付金は、最終的には会社のが負担することになると考えられるので、その分、利益を減らすことになる、(3)融資した資金が、事業活動以外にも流用される可能性が高くなり、その場合、信義則に反する行為ととられられるといったことが挙げられます。
[本文]
前回は、中小企業の決算書の役員貸付金は、なるべく早く経営者個人の資産で会社に返済し、解消することの望まれますが、もし、経営者の手許資金がないときは、個人で融資を受けたり、役員報酬を増額して返済原資を捻出したりする方法があるということを説明しました。今回は、なぜ、銀行が役員貸付金のある会社を評価しないのかということについて説明します。
1つめは、銀行も、役員貸付金が計上されている背景については理解しているため、そのような会社は、経理処理が不正確であったたり、また、経営者が公私混同をする傾向にあったりすると判断するということです。2つめは、役員貸付金が計上されたままの会社は、その金額は、実質的に会社の費用とみなし、その金額の分だけ、利益を減額して会社を評価します。
確かに、役員貸付金は、形式的には会社の費用ではないのですが、その金額は、会社からも、社長の手許からも、すでに流出しており、また、役員が返済できないということは、最終的には会社が負担することになるという考え方をします。3つめは、1つめの理由と重なる面もありますが、融資した資金を、事業以外の目的で支出される可能性が高いと判断するということです。
1つめの理由は、経理処理の観点での問題ですが、3つめは、融資を受ける側としての信義則に疑義を持たれるということです。繰り返しになりますが、経営者が、事業拡大のための活動にともない、費用も発生するということは当然です。しかし、そのことと、経理処理が不透明であったり、公私混同をしたりしてよいということにはなりません。銀行から信頼され、安定的な資金調達を受けることができるようにするためにも、適切な経理処理を行うことは重要です。
2023/9/13 No.2464
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