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部下と同様に上司もマネジメントする

[要旨]

冨山和彦さんによれば、これからの日本が、欧米や新興国のように、年齢に関係なく出世が決まる世の中になると、自分より年上の部下を使わなくてはならない場面が増えてくるので、上司も部下も含めてプロジェクト達成のためのひとつのチームであり、そのメンバーをいかにマネジメントしていくかという前提で、あらゆる役職員がリーダーシップを発揮していかなければならないということです。

[本文]

今回も、前回に引き続き、冨山和彦さんのご著書、「結果を出すリーダーはみな非情である」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、冨山さんによれば、中間管理職のうちから、社長の視点に立って判断をしたり、行動をしたりすることが大切であり、日々、全体最適の視点を持って行動をしていけば、そうでない人との能力に大きな差がつくということについて説明しました。

これに続いて、冨山さんは、会社の従業員の人たちは、上司も社長もチームメンバーとして“使う”ことが大切ということについて述べておられます。「欧米や新興国のように、年齢に関係なく出世が決まる世の中になると、自分より年上の部下を使わなくてはならない場面が増えてくる。『そういうときは、何に注意すればよいですか』という質問を受けることがあるが、基本的に、年上も年下も関係ない、と私は思っている。

役職に関しても同じことで、自分の部下をマネジメントするのも、上司をマネジメントするのも同じことである。より正確に言うなら、上司も部下も含めてプロジェクト達成のためのひとつのチームであり、そのメンバーをいかにマネジメントしていくかが大切なのである。ひとつのプロジェクトを動かすときに、例えば、予算権限を自分の上司が握っているとしたら、その“大蔵省”である上司もメンバーと捉えるべきである。

大きなプロジェクトになれば、関係部署も増え、稟議書にハンコをもらわなければならない管理職の数も増えていく。その人たちと自分の部下を合わせて、全部をプロジェクトチームと考えるのだ。組織のヒエラルキーというものを絶対視しすぎると、そういう発想でプロジェクトを柔軟に動かしていくことができなくなる。仮に、課長である私と、部長である上司との関係が逆転したらどうしよう……などということは、端から考えてはいけない。逆に、部下だと思って油断したり、不遜な態度をとったりするのも愚かしい行為だ。

とにかく、部長であろうと社長であろうと、プロジェクト達成に向けた自分の駒だと考える。客先に社長を引っ張り出した方が、プロジェクトがスムーズに進むと思ったら、土下座してでも社長を連れていくべきなのである。チームメンバーをどう動かすかというときに重要なのは、メンバー一人ひとりのクセや性格、抱えている利害関係と社内的立場、あるいは人間関係、そういった情報をなるべく多く、事前にインプットしておくことだ。相手のことをよく知っておかないと、うまくハンドリングはできない。それは、相手が部下でも上司でも、本質的には同じなのである」(48ページ)

冨山さんのご指摘しておられる、「上司も部下も含めてプロジェクト達成のためのひとつのチームであり、そのメンバーをいかにマネジメントしていくかが大切」という考え方は、前回、少し触れた、シェアドリーダーシップの考え方のことだと思います。日本では、従業員に対してリーダーシップを身に付けさせるための働きかけがあまり行われていないということもありますが、まだ、年功序列、上意下達の雰囲気が会社に強く残っているため、「上司も部下もマネジメントする」という考え方をして活動することは難しい面があると思います。

また、特に、中小企業では、社長=会社のオーナーという面があり、社長もチームメンバーと考えることは、さらに難易度は高いと言えるでしょう。その一方で、中小企業経営者の方の中にも、部下に対して、「自律的に仕事をして欲しい」とか、「幹部候補生が現れて欲しい」などと望んでいる方が少なくないと思います。そうであれば、社内にシェアドリーダーシップを定着させることが、理想に近づくための鍵になると思います。もちろん、それは一朝一夕には実現しませんし、時間や労力や費用を要することになります。

ただ、これも前回言及しましたが、現在、会社が他社と差別化できる部分は、組織づくりの面に限られています。したがって、1日でも早く、シェアドリーダーシップの浸透のための取り組みに着手することが重要です。また、経営者の方の中にも、「部下にマネジメントされたくない」と考えている方も少なくないと思います。もし、そのような方がいれば、「部下にマネジメントされるようになるということは、部下のスキルが高いからできること」と考えるようにしましょう。

2024/7/24 No.2779

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