経営者保証解除のダブルバインド
[要旨]
経営者の方が、真摯に自社の事業の発展に努めていれば、銀行はそれを評価し、個人保証の解除に応じてくれるでしょう。一方で、保証の解除にしか目を向けていない経営者の方は、かえって、その目的の達成が遠のいてしまうでしょう。
[本文]
前回、「経営者保証を解除してもらえない原因は、会社の実態が個人商店のままだから」ということを書きましたが、もう少し補足したいと思います。これも、前回、述べましたが、銀行が融資相手の会社の経営者に対し、個人保証を求める理由は、規律付けの意味合いが大きいと書きました。とはいえ、銀行が経営者保証の解除に応じようとするときは、融資相手の会社の事業が組織的に行われているかどうかということよりも、もっと大きな要因があります。それは、事業で利益が得られているかどうかということです。事業が黒字であれば、融資が返済される見込みが高くなり、そうであれば、経営者保証の有無は、融資判断の要因としては、あまり重要ではなくなります。
ですから、極端なことを書けば、経営者がほぼ毎日のように、会社所有の高級車に乗り、会社が会員権を所有するゴルフ場に行き、ゴルフをプレーしていたとしても、事業が黒字であれば、銀行は経営者保証の解除に応じることはあり得ると思います。これは、融資を受ける側にも理解できることなので、業況が好調な会社の経営者の方は、融資を確実に返済できる自信があるので、銀行に対して、ひとこと、「自分が保証人にならなくてもだいじょうぶだよね」とだけ伝えることで、銀行も個人保証の解除に応じるでしょう。
一方、業況が好調といえない会社の経営者の方は、銀行に対して、自分が保証人から外してもらえるかどうか自信を持つことができないので、「どうすれば個人保証を解除してもらえますか」ということを、銀行に相談することになるでしょう。でも、このように銀行に伝えることは、ある意味、「自社の業況があまりよくないので、融資を返済できるかどうか、あまり自信がない」ということも伝えることになるという面があると言えると思います。
だからといって、私は、直ちに、「経営者の方は、自社の事業に自信を持たなければだめだ」ということを述べようとは考えていません。でも、経営者の方が第一に努力すべきことは、当然のことですが、事業を発展させることであって、経営者保証を解除することではないでしょう。それにもかかわらず、経営者保証の解除ばかりに目を向けていては、かえって、その目的は遠のいてしまうことになるのではないでしょうか。