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『一人当たり利益率』なら勝負できる

[要旨]

アルミ加工メーカーのヒルトップの相談役の山本昌作さんによれば、中小企業は売上では大手に勝てませんが、一人あたり利益率なら十分勝負できるということです。事実、ヒルトップの利益率は20~25%で、大企業を大きく引き離しているそうです。そして、同社がこようになったのは、自社の存在価値を信じ続け、社員や仕組みを改善してきたからであり、中小企業だからといって、必ずしも大企業に勝つことはできないと考えるべきではないということです。

[本文]

今回も、前回に引き続き、アルミ加工メーカーのHILLTOP株式会社の相談役の山本昌作さんのご著書、「ディズニー、NASAが認めた遊ぶ鉄工所」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、山本さんは、かつては、単純作業の多い仕事をしていましたが、その後、一念発起して、「白衣を着て働く工場」を実現しようという理想を実現しようと考えた結果、それが実現できたという経験から、理想を実現させるためには、強い意志を持つことが大切ということについて説明しました。

これに続いて、山本さんは、事業規模の小さい会社であっても、大企業に臆する必要はないということについて述べておられます。「2017年冬のボーナスの平均妥結額は『91万6,396円』、製造業の平均は『92万1,907円』です(東証一部上場、従業員500人以上、主要21業種の大手251社調査対象、集計した74社の妥結状況、経団連発表)。この数字を見たとき、町工場の経営者も社員も、『会社の規模も待遇も違うから、大企業と比較してもしょうがない』と考えてしまう。

でも、中小企業だからといって、自分たちを卑下する必要はない。大手企業に真っ向勝負を挑めばいいのです。かつてのヒルトップの社員にも、負け犬根性が染みついていました。『大手と中小は違う』と勝手に壁をつくって、勝手に卑屈になっていました。まだ油まみれになって働いていたときのことです。昼休みに、汚い工場の食堂で弁当を食ベていると、テレビのニュースで、『今年の製造業の平均賞与額は……○○万円です』と紹介されました。

すると、その場に十数人いた社員は、下を向き、目を背け、聞かなかったフリをした。勝負もしていないのに、勝手に『負けた』、『自分には関係ない』と、いたたまれない気持ちになったのでしょう。それを見て、私は悔しくて、何としても負け犬根性を払拭したかった。『なんで見いひんのや。中小企業だからって、下を向く必要はない。おまえらはヤンキー・暴走族かもしらんけど、能力では大企業の社員にも負けてない!大企業のヤツらはみんな同じで、金太郎飴みたいじゃないか。

“あいつら、金太郎飴のくせに、どうしてオレらよりもポーナスがいいんだ!”と、怒ったらええやんか!』中小企業にとって一番の処方箋、それは、自分の存在価値を信じ続けることです。売上では大手に勝てない。けれど、『一人あたり利益率』なら十分勝負できる。通常、この業界の利益率は平均3~5%、高くて8%ですが、ヒルトップの利益率は『20~25%』。大企業を大きく引き離しています。

ヒルトップの企業規模を考えると、京都府内の売上高ランキングに入ることはありません。でも、仮に『一人あたり利益率ランキング』があったら上位を狙えます。『小さい会社にも価値がある。その価値は、大企業以上。アルミ加工の分野では絶対にどこにも負けない……』そう言い続けた結果、社員が変わり、仕事のしくみが変わり、利益率が変わり、『油まみれの町工場』は『夢工場』に変わったのです」(66ページ)

中小企業庁が公表している、2016年版中小企業白書概要によれば、労働生産性(従業員一人あたり付加価値額)で、大企業の平均を上回る中小企業は、製造業で約10%、非製造業で約30%あるそうです。多くの大企業は、経営資源の量や質において中小企業よりも優位であることに間違いはありませんが、中小企業だからといって必ずしも大企業に劣るわけではないということも事実です。

では、どのような中小企業が収益力が高いのかというと、「経営者が(1)ビジョンを明示し、(2)従業員の声を聞きながら、(3)人材育成、(4)業務プロセスの高度化などを行うことにより、さらに生産性の向上につなげているという共通点があった」ということです。もちろん、中小企業が大企業平均を上回る労働生産性を実現することは、頭で考えるほど容易ではないし、一朝一夕に実現することも難しいでしょう。

しかし、「自社は中小企業だから…」と考えて、大企業に勝つことはできないと考えることも誤りだと思います。むしろ、最近は、情報技術の進展によって大企業と中小企業の「経営力」の格差は縮小していると、私は考えています。したがって、山本さんも述べておられるように、「中小企業だからって下を向く必要はない」のです。

2025/1/23 No.2962

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