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キャッシュフローで融資返済能力を示す

[要旨]

銀行は、融資相手の会社の返済能力があるかどうかを、キャッシュフロー(=税引後利益+減価償却費)が十分かどうで判断しています。したがって、経営者の方は、融資返済額以上のキャッシュフローを得ることができるよう利益目標を設定し、それが達成できるよう、把握しながら事業活動を行うことが求められます。

[本文]

今回も、前回に引き続き、税理士の児玉尚彦さんのご著書、「会社のお金はどこへ消えた?-“キャッシュバランス・フロー”でお金を呼び込む59の鉄則」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。児玉さんは、銀行から融資を受け続けることができるようにするためには、利益を計上し続けることが大切であり、そのためには、きちんと利益の目標を定め、計画的にその利益を獲得するようにすることが大切と説明しておられます。

「会社に融資を呼び込むには(中略)、目標となる利益を、必要となる融資額から設定し、次に、目標利益をベースに計画を立ててもらうようアドバイスしています。(中略)それでは、具体的な数字を使って、融資を返済するために、いくらの利益が必要なのかを計算してみましょう。融資の返済額が、毎月、150万円、すなわち、年間1,800万円(=150万円×12か月)だとします。

これを、会社のキャッシュフローで返済していきます。このキャッシュフローとは、税引後利益に減価償却費を加えたものです。この会社の損益計算書を見ると、年間の減価償却費が600万円であったとします。この減価償却費600万円は、お金を払わずに費用になっているので、これを最初に返済に充てます。したがって、年間返済額1,800万円から減価償却費600万円を引くと、あと1,200万円足りませんので、これを利益で返済することになります。

ただし、利益が出ても、そのうち税金で4割を取られてしまいますから、利益を税引前の金額に直します。すなわち、税引後1,200万円の利益とするには、税引前で2,000万円(=1,200万円÷(100%-40%))の利益が必要です。よって、この会社では、融資を年間1,800万円返済するために、税引前利益2,000万円を計上しないと、お金が減ってしまうことになります。

お金が足りなくなったら、また借りればいいじゃないかと思うでしょうが、借りるためにも、やはり、利益が必要になってきます。返済額に見合ったキャッシュフローを出しておかないと、融資枠が減額されてしまい、結局、お金が減ってしまうのです」(179ページ)

銀行は、融資の返済に十分なキャッシュフローを得ることができているかどうかを、融資審査のときに重視しています。とはいえ、現実的に、十分なキャッシュフローを得ることができている中小企業は、割合としては少ないので、キャッシュフローが少ないからといって、直ちに、融資を断られるというわけではありません。ただ、十分な融資を受けることができないというときは、このキャッシュフローが少ないことが原因です。

ただ、もっと問題なことは、このキャッシュフローが多いか少ないかということの前に、経営者の方が、児玉さんがご指摘しておられるとおり、必要なキャッシュフローを目標としていなかったり、また、キャッシュフローがどれくらい得ることができているかどうか、月次で検証していなかったりすることだと思います。要望通りの融資をしてもらえない原因のひとつには、前述のように、十分なキャッシュフローが得られていないというだけでなく、会社のキャッシュフローが、現在、どれくらい得ることができているかどうかを、タイムリーに把握できないということがあります。

融資申込をしたときに、直ちに返答をしてもらえずに、銀行職員から、「決算が終わってから、改めて融資申請をしてください」というようなことを言われるのは、キャッシュフローが得られているかがわからないからということも考えられます。したがって、繰り返しになりますが、自社が十分な融資返済能力があるということを示すためにも、経営者の方は、キャッシュフローの目標設定、把握、管理に注力することが大切です。

2022/12/29 No.2206

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