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安定性の低い事業に銀行融資は向かない

[要旨]

通信販売会社にとって、広告費は売上を増やすための重要な費用です。しかし、自ら製品を製造したりせず、他社の製品を販売するだけでは、銀行は事業が安定しないととらえ、広告費のための融資は避けようとする傾向があります。そこで、高い利益率を継続できるのであれば、資金調達コストは高くなるものの、ベンチャーキャピタルから出資を受けることが妥当と考えられます。

[本文]

前回まで、税理士の大久保圭太さんのPodcast番組を聴いて、私が気づいたことについて説明してきましたが、今回は、大久保さんの番組の別の配信について、私が感じたことを述べたいと思います。番組では、リスナーの会社経営者の方が、自社は、売上2億円、利益2,500万円の美容品販売会社で、広告費を投入して売上を得ており、事業拡大のために運転資金の追加融資を銀行に打診したが、難色を示されたのはなぜかという質問をしていました。

これに対して、大久保さんは、銀行は保守的な考え方をしているので、広告費のための融資を嫌う傾向にあるとご回答しておられます。私も、大久保さんのご指摘は事実だと思います。しかし、「業績がよい会社に対して、銀行が融資しないことはおかしい」と感じる方も多いと思います。もちろん、銀行も、化粧品販売業や、通信販売業にとって、広告費は重要な原価であると認識しています。

ちなみに、化粧品販売業や、通信版倍業の広告費は、売上高の10~20%と言われています。しかし、販売する製品が自社製品ではなく、他社製品を、広告費をかけて販売しているだけの事業の場合、銀行は、事業の安定性に疑問を持ちます。例えば、アットコスメのように、化粧品販売のポータルサイトとしての基盤を確立できているような会社であれば別ですが、販売する商品を他社からの供給に頼るだけで、広告費を投入しているだけでは、事業は不安定であると評価されてしまいます。

では、このような会社は資金調達に限界があるのかというと、私はベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達であれば可能性が高いと考えています。ご相談のあった会社は、利益率が12.5%と、かなり高いので、VCでは終始した額に対して5%以上の高い配当率を期待し、出資に応じてくれると思います。これに対し、「VCからの資金調達費は融資より高くなる」と考える方もいるかもしれません。しかし、それは、裏を返せば、銀行の融資金利は安く、安定的でない事業への融資は消極的にならざるを得ないということです。

しばしば、日本の銀行は融資に消極的と言われることがありますが、消極的になる要因には、金利が安く、リスクの高い事業への融資は採算がとれないという面もあると私は考えています。結論としては、VCからの資金調達コストは、銀行からの融資に比べて高いものの、それでも利益率の範囲内に収まるわけですから、VCによる資金調達によって、VCへの配当後の利益額を増やす確保できることになるでしょう。したがって、これからも高い利益率を継続できる自信があるのであれば、VCへ出資を申し込むことが妥当だと思います。

2024/7/21 No.2776

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