問題児を負け犬ではなく花形にする能力
[要旨]
AbemaTVは、年間、200億円の赤字が出ていますが、将来、収益を得られる事業になる可能性があるため、その事業に参入したことは妥当と言えます。ただし、それを、収益の得られる事業にするには、相当の努力も必要なので、そこに、経営者の手腕が問われると言えます。
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私は、大相撲中継は、AbemaTVで視ているのですが、このAbemaTVは、年間で約200億円の赤字が出ていることで話題になっています。これについては、ZUUM-Aが運営する経営者向けメディアのTHEOWNWERが記事として取り上げています。その記事によれば、AbemaTVを運営する、サイバーエージェントが、赤字のAbemaTVに資金をつぎ込んでいる理由は、インターネット広告の市場規模が拡大しているからということです。2019年は、テレビ広告の市場規模が2兆円を割ったのに対し、インターネット広告の市場規模は2兆円を超えたそうです。
そういった意味では、動画配信に早い段階から参入して、シェアを広げておくという考え方は、王道と言えるでしょう。私は、この、赤字のAbemaTVの事業は、かつての、サントリーのビール事業に似ていると思っています。サントリーのビール部門は、かつては赤字でしたが、それは、ビールも卸売店などに納品できないと、同社の主力商品のウイスキーや焼酎も販売できないという事情があったことは有名です。
ですから、ビール部門が赤字でも、他の部門の収益に貢献しているので、赤字の部門を持つことは妥当であったと言えます。もちろん、サントリーのビール部門は、現在は黒字化し、さらには、プレミアムモルツという看板商品を持つにまで成長しています。話をAbemaTVに戻しますが、現在、AbemaTVの累積赤字は700億円にのぼっているそうです。この状態に関して、評論家的に分析すれば、プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)の問題児の事業です。
でも、やがて、資金流入が資金流出を上回れば、問題児の事業は花形の事業になり、そして、他の事業にまで資金を供給できる金のなる木の事業になることが期待されているのでしょう。とはいえ、このような分析は、部外者だから簡単に言えるのだと思います。AbemaTVを運営している方たちは、なんとか事業を黒字化しようと、大きなプレッシャーを受けながら、日々、多くの努力を積み重ねていることでしょう。
さらに、どちらかというと、PPMの問題じは、すべて花形になるとは限りません。収益化できず、負け犬になる事業もあります。だからこそ、問題児の事業を花形に育てることができるのか、負け犬にしてしまうのか、そこに、経営者としての力量が問われていると思います。私は、問題児の事業を花形の事業にするという能力を持っているかどうかに、経営者の必要とされる能力の大きな部分を占めていると考えています。
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