[要旨]
多くの人が、面倒であるにもかかわらず、毎日、努力をせずに、歯磨きををしているように、面倒であっても継続することで、それを実践するための労力が不要になって行きます。したがって、経営者の方も、避けたいと思うことがあっても、それを継続することで、労力が少なくなっていくので、このように、継続できるかどうかが、経営者の能力を高めるための鍵になると考えられます。
[本文]
今回も、経営コンサルタントの杉浦央晃さんのご著書、「もし明日自分が死んだら-残された我が子に親父から伝えたい10の言葉」を読んで、私が気づいたことについて述べます。前回は、主力となる事業のほかに、いくつかの事業を展開することが、リスクを分散することになり、また、マネジメントノウハウを共有して効率化できるということについて説明しました。これに続いて、杉浦さんは、「歯磨き力」の大切さについてご説明しておられます。
「愛知県出身で、野球が好きな僕は、イチロー選手のファンで、イチロー選手がメジャーに行った、2001年から、彼の応援に行くことが僕の夢でした。そんな夢を語り続け、2014年の9月、ヤンキースでの最後の姿を見に行くことが出来たのです。(中略)僕は、イチロー選手のストイックな姿勢や、考え方に興味を持ち、彼の本はすべて読んできました。そして、どの本でも、必ず取り上げられているのが、イチロー選手のルーティーンについてでした。
ルーティーンとは、同じ動作を繰り返すことで、イチロー選手が打席に入る時の一連の動作がそれです。その他にも、球場に入る一歩目についてや、毎日食べるカレーライスの話しなども有名です。ルーティーンとは、毎日、当たり前のようにこなす動作のことですが、これは、ビジネスにおいても大切な能力だと感じます。僕の場合、起業した2009年から、毎日、ブログを書いていますが、毎朝9時に更新する、この作業が日々のルーティーンとなっています。
こうして本書を書いている今も、ブログの更新は、365日、休むことなく続けていますが、毎日、ブログを更新していることを、つらいとか、努力だとかと感じたことはありません。しかし、色々な人から、『すごいですね』とか、『努力していますね』と言われるのです。では、イチロー選手のルーティーンは、努力だと感じるのでしょうか?恐らく多くの人は、そう感じないと思います。日々、同じことを続けていることを、努力と感じることもあるし、努力と感じないことがあるのです」
杉浦さんは、イチロー選手のルーティーンのように、一般の人も、努力せずに歯磨きをしているので、面倒なことでも、それを続けることで、努力と感じることなく実践できるようになる能力を、「歯磨き力」と呼んでいるそうです。これは、人によって考え方が様々だと思うのですが、私は、事業活動(だけではありませんが)においては、やりたくないことであっても、避けることができないことも少なくないことが現実だと思っています。
正直に言えば、やりたくないことの方が多いし、さらに、会社のトップに立つと、その割合は高くなると思います。よく、たくさんの希望を持って起業してみたものの、起業してからは、「こんなはずではなかった」と感じるのは、そういうことだと思います。だから、そういう嫌なことを、「歯磨き力」によって努力を不要にすることができるようになれば、事業は成功に近づいていくと、私は感じています。ちなみに、杉浦さんのいう「歯磨き力」のことを、私は、「自転車のペダルの法則」と呼んでいました。
これは、私が、セラピストの石井裕之さんの講演で教えてもらったものです。すなわち、自転車のペダルを漕ぐとき、最初はペダルが重たいのですが、自転車が進むにつれて、徐々にペダルが軽くなり、ペダルを漕ぐための力が少なくてすむようになって来るのと同様に、ルーティーンも、始めた直後は、それを続けるための労力は大きいですが、続けていくうちに、その労力が徐々に少なくなってくるというものです。
したがって、最初の大きな労力を乗り越えることができるかどうかが、「やりたくないこと」を努力せずにできるようになるかどうかの鍵になるということです。杉浦さんも、この歯磨き力が最も難しい能力で、最初の3か月が山だと述べておられます。もし、あなたも、何か苦手なことがあるようでしたら、3か月間だけ、頑張って継続してみませんか?
2023/8/31 No.2451
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