手元流動性を高める方法
[要旨]
中小企業が手元流動性を高めようとするには、まず、業績と財務基盤を高めることが必要です。次に、銀行と良好な関係を築き、手元流動性を高めるための融資に協力してもらいます。または、社債を発行することで、多額の資金調達を行うことも可能です。
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先日、ある経営者の方から、手元流動性を高めるために、銀行から融資を受ける方法についてご相談がありましたので、その回答内容をシェアします。ちなみに、手元流動性とは、手元流動性=(現金+預金+有価証券)÷売上高で計算され、会社の短期的な支払い能力を示す指標です。では、なぜ、この手元流動性が注目されているのかということについては、私が過去に配信した記事をお読みください。
ところで、銀行は、融資相手の会社に対しては、必要最小限の金額しか融資をしないということが原則です。したがって、手元流動性を高めることがリスクに備えるためにつながるとはいえ、一般的には、銀行は、不要不急の融資には応じることはしません。しかし、場合によっては、銀行が、「不要不急」の融資に応じてくれることがあります。その条件は、自社の業績がよいということと、財務基盤が強いということです。すなわち、銀行から安心して融資ができるということです。
では、その具体的な条件についてはどのような状態を指すのかということについては、一概に示すことは難しいのですが、継続して安定的に利益を計上していること、そして、ある程度の内部留保(利益剰余金)があることです。繰り返しになりますが、これらは、ケースバイケースなので、どれくらいあればよいのかということは示すことは難しいということをご了承ください。では、自社がこれらの条件を満たしているとして、銀行にどのように融資を申し込めばよいのかということですが、まず、ひとつめは、銀行と良好な関係を築くことです。
良好な関係とは、ギブアンドテイクの関係を築くことです。例えば、業績がよい会社の中には、金利を常に低くするよう銀行にプレッシャーをかけていることも少なくありません。融資を受けている会社が、コストパフォーマンスを高めるために、銀行に有利な条件を交渉しようとすることに問題はないのですが、銀行からみて取引条件の厳しい相手と受け止められていると、「不要不急」の融資を申し込んでも、応じてもらいにくくなるでしょう。
したがって、必要以上に悪い条件を受け入れる必要はありませんが、ある程度は高めの融資金利を支払い、銀行から見て、さらに取引を拡大したい相手と感じてもらわなければ、ギブアンドテイクの関係を築くことはできないでしょう。なお、融資金利が低くても、会社自身や、経営者とその家族、従業員などの預金取引が多ければ、銀行からみれば取引を深めたい会社と評価してもらえるので、預金を増やすということもひとつの方法です。
では、つぎに、融資の申し込み方法ですが、最もよい方法は、銀行から融資セールスを受けた時に、それに応じることです。融資セールスは、現在、融資を受けている銀行から受けることもあるし、融資取引のない銀行から受けることもあります。その機会に、融資を受ける方法が最も簡単です。しかし、融資セールスを受けない場合はどうすればよいのかというと、これもケースバイケースなので、一概には言えませんが、銀行に対して、「手許資金を厚くしたいので、念のために融資を受けたい」と打診してみることがよいのではないかと思います。
そのような打診をしたとき、銀行から「不要不急の融資には応じない」と言われることもあるかもしれませんので、銀行が「察してくれる」まで、何度か試してみるとよいと思います。また、融資を受ける以外に、社債を発行することで資金調達することも可能です。とはいえ、多くの中小企業では社債を発行する経験を持っていないと思いますので、まず、信用保証協会の制度保証( https://x.gd/8nXgf )を利用することをお薦めします。これを利用すれば、最大で5.6億円の資金調達が可能になりますので、自社の手元流動性をかなり高くすることができるでしょう。
2023/8/7 No.2427
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