補助金の事業計画書は融資とは異なる
[要旨]
補助金を申請しようとする経営者の方の中には、補助金が採択されるような、完成度の高い事業計画を作成することに苦心している方も多いようです。その原因のひとつは、普段は、事業計画をあまり作成していないことが考えられます。しかし、競争の激しい時代にあっては、精度の高い計画を作成する能力が求められつつあります。
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最近、補助金の申請のご支援の依頼が増えているのですが、少し気になったことがあります。というのは、補助金申請のための事業計画書は、融資の申請のための事業計画書よりも高い精度でつくらなければならないということを、あまり気づいていない経営者の方が多いということです。ちなみに、両者でどういった点が異なるかというと、主に、次のようなところです。
ひとつめは、融資の場合、業績が向上することが銀行に理解してもらう程度でよいものの、補助金の場合、単に業績が向上するだけでなく、特に事業再構築補助金は、特徴のある戦略であることが求められます。ふたつめは、融資の場合、計画値に厳密な根拠はそれほど強く求められませんが、補助金の場合は、文字や表で客観的に示す必要があります。
みっつめは、融資の場合、銀行側からも歩みよって、融資承認が得られるよう助力してもらえますが、補助金の場合、他社とのコンペティションになるので、自ら積極的に強いアピールをする必要があります。これらについては、多くの方が理解されると思いますが、実際に補助金を申請しようとすると、慣れていないためか、補助金のための事業計画の作成に苦心している方が多いようです。
本題からそれますが、事業計画の作成を、専門家が支援するとしても、そもそも、実現性が低い構想をもとに「事業計画書」を完成させても、それは、説得力が低いものになります。当然のことですが、専門家の支援は、事業計画書の「清書」ではなく、基本構想の肉付けなので、土台の構想が乏しければ、成果物も、それなりのものになってしまいます。本題にもどすと、中小企業の経営者の方の多くは、融資を申請するための事業計画作成しか、普段は行っていないのではではないかということを、改めて感じました。
もちろん、独力で、精度の高い事業計画書を作る経営者の方もいます。そして、どちらの経営者の方が経営する会社の業績がよくなるかというと、精度の高い事業計画書を作ることができる経営者の方の経営する会社の方でしょう。少し厳しい書き方ですが、中小企業の多くは、融資申請のために、必要に迫られて事業計画書を作っていると思いますが、視点を変えて、自社の事業をよりよくするためのツールとして、能動的に事業計画を作るようにすることが大切です。