日本リスキリングコンソーシアムが発足
[要旨]
デジタルデバイドを緩和するためのトレーニングプログラムを提供する機関である、日本リスキリングコンソーシアムが発足しました。いま、日本では、情報技術リテラシーを持つ人が少なく、そのことが会社の競争力が高まらない要因になっていることから、この機関を多くの方に活用されることを期待しています。
[本文]
6月16日に、日本リスキリングコンソーシアムが発足したと発表がありました。この「リスキリング」とは、「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得すること、または、させること」です。そして、同コンソーシアムでは、「日本の社会において、労働人口の減少や、地方と都市部、大企業と中小企業のデジタル格差、デジタル人材の不足が大きな課題」になっている中にあって、「AI、デジタルマーケティングから働き方や学校教育まで、さまざまなテーマの200以上のトレーニングプログラムを提供」するそうです。
ひとことで言えば、デジタルデバイドを緩和するためのトレーニングプログラムを提供する機関のようです。私は、このような機関ができたことは、とても評価したいと思う一方で、もっと、早くできて欲しかったとも考えています。というのは、いま、日本の中小企業の業績が、なかなか向上しない要因の主なもののひとつは、情報技術リテラシーを持っている経営者や従業員が少ないからだと考えているからです。そして、かつては、情報技術は、既存の事業の省力化、効率化などを目的として利用されていましたが、現在は、それよりも、情報技術を自社の事業をどのように活用できるかが重要になってきています。
例えば、埼玉県春日部市に本社のある三洲製菓は、トレーサビリティのシステム化により、2005年の売上高を、前年比12%増の27億円に伸ばしています。トレーサビリティとは、もとの意味は追跡可能性という意味ですが、現在は、食品の加工・製造・流通などの過程を明確にすることという意味で使われています。同社では、以前から手作業でトレーサビリティを行ってきましたが、情報技術の導入によって、材料、仕掛品、製品にラベルを貼って追跡を容易にするなどの合理化を行うようにしました。
これだけであれば単なる合理化に過ぎませんが、製造工程のデータを社員全員で共有できるようになったことから、クレーム対が、従来の5日間から1日間に短縮し、納品先からの信頼性を向上させただけでなく、社員の安全への取り組みの意識を向上させることにつながっています。確かに、これらの効果は手作業を機械化したことで得られるものですが、信頼性向上を目指すという戦略のもとで情報化を行っている点で、単なる合理化とは異なるものとなっています。
この事例のように、現在は、単に、パソコンなどの情報機器の操作に詳しい人がいるというだけでは、会社の競争力を高めることはできません。情報技術を会社の事業に戦略的に活用できる能力が求められており、繰り返しになりますが、このような能力を持つ人材の不足が、いまの日本の業績が向上しなくなっていることのボトルネックになっていると、私は考えています。したがって、これから多くのビジネスパーソンに、日本リスキリングコンソーシアムのトレーニングプログラムを活用していただき、ボトルネックが解消していくことを期待しています。
2022/6/18 No.2012
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