Rettyでプロダクトマネージャーのスキル定義&評価制度を導入した話
Rettyプロダクト部門担当執行役員の野口です。PMのスキル定義や評価制度を導入し、プロダクトマネジメントを組織に浸透させる取り組みについて書いていきます。
この記事はRetty Advent Calender 2020の23日目の記事です。昨日は個人ベース・ビジネスドリブンのチームにスクラム導入して1年が経ったので振り返るでした。
Rettyプロダクトマネジメントに関する組織変遷あらすじ
以前、Rettyの理想のプロダクトマネージャーとはを言語化してみたという記事を書きました。
Rettyではプロジェクトマネジメントドリブンで、プロダクトマネージャー(以下PM)職種がない組織でした。PM職種導入のため、プロダクトマネージャーの理想像を言語化し、すり合わせたという話でした。「Rettyの未来に向かって、突破できる人」を理想としています。
今回は、上記の記事の後編として(後編書くのに半年かかってしまった・・・)、2019年12月以降で行ったプロダクトマネージャースキルの定義と評価制度への組み込みについて、記載していきます。
背景:LeSS・プロダクト全体思考で「何を」「なぜ作るか」がより求められる組織に
Rettyでは2019年大規模スクラム(LeSS)を導入し、プロダクト全体思考により、ユーザーさんにとって、そしてRettyプロダクト全体にとって、本当に価値のあるものから開発しようという思想に変化してきました。
それまでエンジニア(40名程度)とプランナー(従来企画職、ディレクター役割の職種で15名程度)、デザイナー(3名)とその他QAやオペレーターも含めて合計60〜70名程度が全て一組織で開発してきましたが、エンジニア人員はエンジニアリング部門に配属となり、エンジニアリング部門が「どうやって」、プロダクト部門が「何を」「なぜ」作るかに責任を持つ体制に変わっていきました。
それにあたって、これまで進捗管理・プロジェクトマネジメントが仕事の大半を占めてきたプランナーの役割や求められるスキルも変わることに。
評価制度と合わせて、プロダクトマネージャーのスキル定義やプロダクトマネージャー職種の導入について議論するようになりました。
もちろん、エン・ジャパン岡田さんによるPMなら誰でも知っているPM SkillChart HEXのnoteも参考にさせていただきました。
岡田さんにはpmconf2019で質問の機会を頂いたのに加え、共通知人を通じてご飯もご一緒させていただき、PMスキルを社内で言語化するためのあれこれを丁寧に教えていただきました。本当に感謝です(またサッカーの話しながら、飲みましょう)。
さらにPMのスキル評価にはエンジニアリング部門が先行して行っていた評価制度も全力参考にしました。
エンジニアとPMの前例をベースにデザイナー評価制度も今年爆誕しております。
プロダクトマネジメントスキル導入までの流れ
ここからはどのようにRettyのプロダクトマネジメントスキル(以下PMスキル)を定義し、評価に組み込んでいったか解説していきます。
PMに必要なスキルをリストアップ
PM候補として予定していた当時のマネージャーを中心に議論をしていきました。最初にRettyPM理想像を言語化した後、PMとして自分たちが必要と考えるスキル要素をリストアップしていきました。PM SkillChart HEXで紹介された要素も、勿論参考にしております。
赤裸々にスクショ貼りましたが、粒度様々ですね。そのまま活用されたものもあれば、お蔵入りになったものもありますが、目標とすべき理想像の高さをすり合わせた上で要素を並べていくと、自然と必要なものが見えてくるので、この議論のプロセスは非常に有効でした。
RettyのPM理想像からスキルを絞り込み
具体的に必要なスキルを絞り込んでいきます。項目としてはかなり多く出たのですが、これまでの行動規範の運用経験からも個数が多すぎると覚えられず浸透しないため、3〜5に大項目は絞ることをイメージし、大項目に対して3つ小項目を紐付けることにしました。
全員PMにするか、プランナーの上位職種としてPMを位置づけるか
これは非常に議論になり、悩みました。会社によっては開発企画職は全てPMとしている話も聞きます。ビギナーメンバーであっても、その肩書を任せることで社内外の活動でプラスになることも多いでしょう。
ここは岡田さんにまさに相談させていただきましたが、「PMはミニCEOであるという原理原則より、経営に近い見解で意思決定するのがPMだという前提で決めるべきでは」という言葉を頂き、プランナーの上位レイヤーとしてプロダクトマネージャー(PM)を位置づけることにしました。
ここでのPMを大規模スクラム(LeSS)におけるArea Product Ownerと位置づけ、役割を担当領域の優先順位の決定と実行及びロードマップ作成としました。
スキルの目盛りを設定
次に絞り込んだスキル要素に対して、レベル感、目盛りをどう定義していくかについて議論しました。
スキル要素毎にレベルを定義すべきなのかという議論も出ましたが、スキル要素毎に細かいレベル定義は行わず、スキル要素×各スキル共通のグレード目盛りによって、各スキルレベルを評価することにしました。
元々全社としてグレード制度を導入していたため、そちらに倣って、PMとして求めるグレードにおける発揮能力として期待レベルを定義。G4以上をPMと整理し、担当領域の優先順位の決定と実行及びロードマップ作成をできるレベルで各スキル要素を体現できているかで評価していくことにしました。
あくまでRettyWayを土台とし、PMスキルを伸ばしていく
RettyではRetty Wayという行動規範がありますが、今回のPMスキルはRetty Wayというスタンスを体現できてからこそ、発揮される能力だという前提についてもすり合わせました。どれだけスキルが高くても、RettyWayへの共感がなければ、Rettyでは活躍できないと考えており、特に新卒入社時はスキルの前に、まずRetty Wayの体現を目指してもらうということを改めて明確にしました。
RettyWayはこちらの記事で詳しく書かれています。
ずばりプロダクトマネジメントスキル
このような流れを踏まえて、このような5つのPMスキルを定義しました。
課題発見・意思決定
まずは課題発見です。
定量・定性のデータから筋の良い仮説を立てていく。そしてそれを開発メンバーや経営陣に論理的に説明することができる。この辺りの能力をリストアップしました。分析チームアナリストと協働することがRettyのPM必須スキルであるため、分析の要素が色濃く出ているのが特徴です。
次に意思決定。
ただ課題を発見するだけでなく、何を実装すべきか。やること・やらないことを決めていくための判断材料の準備力・優先度判断力・ロードマップ構築力を盛り込んでおります。
推進力
3つ目は推進力。
意思決定したことをリリースし、ユーザーのアウトカムに繋げてこそのPMです。「開発メンバーに信頼されながら、周りを巻き込み、推進する」ことを目指して、Retty力・リリースマネジメント力・合意形成力を小項目として用意しました。いわゆるディレクションやプロジェクトマネジメントのスキルがここに当たります。
最後の砦・英知
4つ目は最後の砦。
ここは非常に重視した内容で、やはりプロダクトは大きくなればなるほど様々なリスクをマネジメントしていくこと、そして時に起こる障害や不具合に対応できるという守りの要素は必須です。敢えて大項目として明示した要素となります。
最後に英知。
ここにはユーザー・マーケット理解・Rettyに関する知識の他、開発知識や設計・デザイン力の要素も盛り込んでいます。
現状のRettyのPMにおいては、開発やデザインのスキルについては必須のスキルとしては求められておらず、エンジニア・デザイナーと協働できるレベル感を最低ラインとするのが妥当と判断しました。しかし今後これらのスキルが必須になったり、エンジニアバックグラウンドのPMが増えてきたりすると、スキルとして詳細に定義・評価する必要があるため、変わり得る可能性は十分にあるでしょう。
評価制度のイメージ
評価制度としてはこのような流れです。
各スキル要素を採点したものをベースにプロダクトマネージャーで構成されたPMスキルFB委員会でマネージャーにグレード提案する形式をとっています。デジタルに採点するものの、プロダクトマネージャーと認定するかしないかグレードを上げるべきか否かは数字に表れない要素もあるため、数値をベースに提案する流れを取っています。
この流れを半期毎のRetty評価制度に組み込み。まず2020年3月にテストとして、フィードバックシートの記入→PMフィードバック委員会の流れを実施。そこでの気づきを元に、2020年9月に本運用に乗ることになりました。一度テストで試せたため、不安を解消した上で本運用に移行できたのは良かったですね。
導入した効果と課題
導入した結果、プロダクトマネージャーのスキルを可視化でき、各人の得意・不得意が見える化したため、フィードバックする仕組みとしては良くなったのではないかと思います。またスキルを言語化したため、プロジェクトマネジメントに関する学習も以前より盛んになった実感があります。組織力は上がり、大規模プロジェクトでも、以前より大きなアウトカムを目指して開発できるようになりました。
この仕組みを導入し、直近10月には初のPM昇格者が現れました🎉 今後もさらに増やしていきたいものです。
現在のPMスキル要素の課題としては、エキスパート・シニアクラスのスキル要素や目盛りを明確に定義できていない点や、前述したようなエンジニア・デザイナーなど他職種受け入れ時に他職能スキルを1小項目ベースでしか表現できない点があります。組織や人員の変化、我々の目指すべき組織体制を踏まえて、必要に応じてこの辺りの課題も着手していきます。
導入後の取り組み
スキル定義&評価導入を行いましたが、導入すれば終わりではなく、いかに活かして組織を強化し、プロダクト開発に反映できるかが肝。この仕組みをベースに組織強化のための取組みをいくつか行っているので、そちらも紹介です。
キャリアロードマップ
「スキル要素は決めたけど、どのスキルを伸ばしたいか、どういうPJをやっていきたいかマネージャーと本人がすり合わせた方が良いよね」ということで、本人のやりたいこと、マネージャーが期待していることをスプレッドシートベースで2年分ロードマップ化し、見える化・共有するようにしました。可視化するとお互いに新たな発見があり、じゃあロードマップを元に次はどういうPJに取り組んでいこうかという動きにも繋がっており、継続的に運用していきたいですね。
Product Weekend
元々Tech Weekendというエンジニア向けの社内LT勉強会が隔週金曜日にありましたが、そちらを真似してPM・デザイナー・オペレーターが所属するプロダクト部門もプロダクトの事業と組織に関わる学びを共有していく勉強会を隔週で始めました。
最近のProduct Weekendで話されたテーマを一部紹介します。
・リファインメントのベストプラクティス
・勉強会参加の学びの共有
・勉強会登壇LTの練習
・プロダクト部門→広告部門異動した気づきの共有
などなど、これをきっかけに社外登壇するメンバーも増やしていきたいですね。
その他各種勉強会やトレーニング
色々やってます。例として、issueやユーザーストーリーにレビューをもらう壁打ちチャンネルが最近できました。またリモート飲みしながら、先輩社員のキャリアやこれまで悪戦苦闘してきた学びを若手に話すというCareer Beer Bashという取り組みも月一開催でやっております(いつか誰かがnoteを書きます)。野口も外部の勉強会でやったワークショップを社内でもやってみました。
これからのRettyのプロダクトマネージャー組織
PMのスキル要素を定めたり、スキル・キャリアアップへの様々な取組みを行ってきて、徐々に改善されてきた感覚がありますが、まだ種蒔きをして芽吹き始めたくらいの進捗の認識です。ユーザーとビジネスの価値を最大化していくプロダクト主導型の組織にさらにしていくために、今後も組織のプロダクトマネジメントレベルを向上させつつ、プロダクトマネージャーは増やしていきたいです。
社内でもエンジニアや分析チームアナリストのメンバーで将来的にはプロダクトマネージャーを目指したいと明言してくれている人も多いので、彼らにいずれ活躍してもらうためにも、PMの育成やスキルアップなど組織を強化していく取組みはますますやっていく所存です。
そして、Rettyでは食を通じて世界中の人々をHappyにする仲間も募集中ですので、興味を持った人はぜひお話しましょう!