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アートの文脈と歴史

一度ここで、自分の備忘録も兼ねて、芸術・アートに関するまとめをしておこうと思う。

芸術の歴史

まずは、芸術が生まれた歴史について。
おそらく、最初に芸術という概念が生まれたのは、古代ギリシャ時代だろうか。

それ以前にも、ぼんやりとした価値観はあったのだろうが、それが社会の表面に『芸術』という概念で出てきたのは、貧富の差が生まれ、非労働者階級が発生してきたために、余暇と余財を何に使うのか?……という部分から、より価値がある『芸術品』が誕生した、と考えるのが妥当だろう。

その時代、複製品を作ることは非常に困難だった。そのため、ほぼ全てが一点ものとなる。であるからこそ、芸術品は価値を持った。そして、それを作ることができる技術者は【芸術家】と呼ばれ、希少な存在だった。

また、文明も発達していなかったことから、世界そのものの複製をする技術も無かった。それによって写実的な作品にも価値があった。
逆に言えば、抽象的な作品というものには価値がなかった。それが理解できる知性が発達していなかったというのもあるが、抽象作品に希少性が無かったからだろう。

芸術の発展

それがその後、ヨーロッパのルネサンス期において、再び脚光を浴びる。『芸術』という概念が価値観として広く普及したのはこの頃からだろう。
ギリシャ時代と同様、社会の自己組織化が起こり、貧富の差が生まれたために余剰資産が芸術品へと流れるようになった。
チームラボの猪子さんが一生懸命伝えていたのは、カメラが生まれたから絵画に価値が生じた、という話だった。ここで一度まとめておこう。

・芸術とは、社会に余剰資産が生まれたから価値を持ったものである
・その時代で希少な技術を、人工的に具現化できたために価値があった
・芸術品が評価されるのは、多くの場合、過去の作品である

これらを踏まえたうえで、ルネサンス期の芸術へと移ろう。

芸術の飛躍

『ルネサンス』という言葉が既に一つの現象を表現している話ではあるが、この時代に芸術は飛躍的に発展した。芸術バブルと呼んでもいいだろう。
これには前述した通り、技術が発展したため、一般人にも技術的にできることが増えた。それによって人間が表現できるものに希少性が生まれるようになったということだ。

例えば、活版印刷の普及によって、紙の複製品が生まれるようになったため、原本(オリジナル)の価値が高まった。そして当然、それを製作できる作者の芸術家にも価値が生まれた、ということである。

しかし先ほど言った通り、芸術が評価されるのは後の世である。
もちろん当時に評価されたアーティストもいたが、亡くなってから評価されたゴッホのようなアーティストもいた。それを忘れてはならない。

現代において、我々が一般的に認知している芸術とは、この時代のものだろう。私自身も、ずっとその認識でいた。しかしこの流れが、現代アートになるとまた一風変わってくる。

現代アート

現代のアートというものは、非常に多様化してきた。これまで通り、絵画や彫刻などで芸術を表現する人々もいるが、産業革命により工業技術が発展してしまった今、世界の単なる複製品では、カメラやコピー機、3Dプリンターと変わらない。
そのため、より『芸術』として価値が高いものが求められるようになってきたと言えるだろう。

それを、より精度の高い機械にも真似できないようなレベルまで高めようという人々もいるが、それとは逆にルールそのもの、つまりは概念を変えようという人たちもいる。

岡田斗司夫氏はこの状況に関して、『既にコピーが生まれるようになった時点で芸術は価値が無くなった』と評しており、それをして村上隆は『芸術系の学校を出ており、文脈・解釈ができるもの』を芸術と語っているそうだ。

つまり現代アートとは、前提として『資本主義により大量のコピーが生まれてしまった時代を捉え、表現したもの』を芸術として捉えるようになった、という文脈がある。

その一例として出てきたのがポップアートである。また、より希少性を高めるべく生まれてきたのが、『その時、その場所でしか表現できない作品』であり、これは時間と空間そのものを希少価値として作品に織り込んでいる。それに加えて時代性とメッセージ性を合わせたものがバンクシーだ。

このような芸術の文脈を踏まえたうえで、未来の芸術というものはどうなるのか。その答えがNFTであると村上隆は言う。

芸術の未来

ブロックチェーン技術を元にした、国家に管理されないデジタルスタンプによりオリジナルは担保され、コピーはいくらでも出回る。これがNFTアートである。
概念のみを抽出した、確かにこれはアートの究極到達点のようにも思える。

前述した通り、また以前の記事でも書いた通り、芸術とは後世で振り返ってみて初めて芸術品と呼ばれるようになるので、現在一般に広まっている漫画やアニメは後世の世には芸術作品と呼ばれるようになるだろう。
そしてそのコピーが生まれれば生まれるほど、オリジナルの価値は上昇し、芸術品となる。

もはや芸術は二極化し、物質的な芸術品にはコピーできなければ相当の価値が発生し、コピー可能な作品は原点(オリジナル)をどう担保するか?という話になってきている。

さらに、AIによってもう作者自身が作品を作らなくても構わない、という話まで発展し、実際にチームによる作品制作も行われている。これからは、さらに芸術とは何なのか?という理念についての議論が行われていくことだろう。

とりあえず、これが私が解釈したアートの歴史としての文脈だ。もしアートを志す人がいれば、この文脈を参考にしてほしいと思う。

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