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唯(umbrella)2nd MiNi Album【iroha】リリース記念インタビュー

V系バンドumbrellaのVo.&Gt.であり、シンガーソングライターでもある。彼のソロ3作目となるミニアルバム【iroha】が、2023年4月24日にリリースされた。

「企画・作詞作曲・編曲・全パートレコーディング・デザイン全て私」

1st MiNi Album【本音】に続き、今作も唯自身がすべてセルフで手がけている。約60曲ものストックの中から厳選し、選び抜いた7曲を収録した本作。

「グッズとしてのCDを残したい」とこだわりを見せる唯に、ミニアルバム制作の裏側を語ってもらった。


「名刺代わりの1枚を」【iroha】に込められたコンセプト

ーー前回のミニアルバム【本音】は全7曲でストーリーが繋がっていましたが、【iroha】はどのようなコンセプトでしょうか。

唯:もともとソロで出す音源は、umbrellaの唯ではなく、“シンガーソングライターの唯”としての名刺を作ろうと思ってやっています。それを強く押し出したのが、今回の【iroha】です。【本音】を出した後から、楽曲提供とか音楽に関わる仕事が増えたんですよ。だから自分がどんな曲を作っているのか、「私がやっている曲のカタログですよ」という意味で作ろうと思って。
幅広くジャンルにとらわれない音楽をやってきたから、今回は1曲ごとに世界観が違っていて、単独で成り立つ音楽になっています。

ーータイトルの【iroha】には、どんな意味が込められているのでしょう?

唯:「私のイロハを教えてやるよ」みたいな。私のカタログとしてのアルバムだから、“唯の基本はこういう感じです”と。ジャンル無視の音楽をやっているって、分かってくれればいいなと思って。

ーーもともと作っていたストック曲の中から選んだのでしょうか。

唯:コロナ禍で公開レコーディング(※作詞作曲レコーディングまでをツイキャスで生放送)をやるようになって、曲のストックが死ぬほどできちゃったんです。【本音】を作り始めた頃からだから、23曲くらい。それにプラス、昔作った曲を合わせたら約60曲。

―― 60曲! その中から選ぶのは大変だったのでは?

唯:もちろん(笑)。アルバムの制作途中にできた曲もありますし。「これ入れとかな」って思う曲が急に割り込んで入ってきたり。
だから【iroha】の初告知のとき、「収録曲は1曲ずつ随時発表します」って形にしたんです。1曲目はこれ、みたいな感じで、Twitterにタイトルをアップして。

唯:完成形が決まっていなかったから、わざとそうしました。どの曲にするかずっと決めかねていて、悩んで悩んでこれにする、ってスタイルだったから。
1曲ずつ出すことで、考える猶予をもらっていたんです。だから満を持して決めたのがこれ! と最終発表しました。

ーーそれぞれの曲の決め手は?

唯:60曲もあると、曲調が似たり寄ったりになりがちなんですよね。「自分のカタログにする」がコンセプトなので、いかにして1曲ずつテイストを離すか考えました。
まずは曲調ごとにグループ分けして。明るい曲とかグランジが強い曲とか、オルタナティックな感じとか。その中でも自分が特に好きなジャンルの、トップにくる曲をアルバムに持ってこないとなって。
「聴いてくれた人に同じような風景を見せたくない」って気持ちがあったので、そこだけをすごく集中して考えていきましたね。

ーー頂いた音源を聴いたときに、単独で聴いても楽しめるし、通しで聴いてもすごくまとまっていると感じました。それに失礼かもしれませんが、いわゆる「捨て曲」がなかった。普通、どんなに好きなアーティストでも、アルバムだと「この曲めっちゃ好きだけど、この曲そこまで」みたいなのがどうしても出てくるじゃないですか。 それがなかったんですよね。

唯:やったー。それ、めちゃめちゃこだわったんですよ! 私は音楽人生の中で、「アルバムの中で捨て曲って言われるようなものは絶対に出さない」ってポリシーを持っているので。
じつは基本的にアルバムが嫌いで、本当は音源をアルバムにしたくないんです。2曲目って考え方が嫌で。だって全部、表題曲のつもりで作っているから。できるなら1曲ずつシングルで出したいくらい。今回も、もちろん全楽曲を表題曲だと思って作っています。だからロゴも一つひとつ作ったし。
飽きさせないように工夫したので、「捨て曲がない」って言われるとアーティスト冥利に尽きますね。

リスナーを驚かせる、歌詞カードに隠された仕掛け

ーー前作の【本音】と同じく、今作も歌詞に各楽曲の短編小説がついた20Pブックレット仕様ですね。

唯:今作は1曲1曲独立しているので、小説もそれぞれで完結しています。ただ話を作るにあたって、おもしろいギミックはないかなと。それで、音楽自体は別なのに小説を読むとハッとなる仕掛けを隠しました。

ーーネタバレになるのであまり言えませんが、これはCDを手に取って歌詞カードを読まないと分からない仕掛けですね。

唯:歌詞カードを通して見ると、気づくことがたくさんあるはずです。各小説を最後まで読んだら、「あれ?もしかして……?」となるポイントをあちこちに仕掛けました。これはサブスクの歌詞表示では味わえない、CDならではの美味しさかな。手に取ってちゃんと見るって喜びを、ひしひしと感じてもらいたくて。

ーーこのギミックは唯さんが考えたんですか?

唯:小説家の方から提案されて、私もそれを聞いたときには「はぁー! なるほど!」ってなりましたね。【本音】の小説を書いてくれた方が、今回も協力してくれました。

――小説はどんなやり取りを経て出来上がったんでしょうか。

唯:音源を聴いてもらってから、作家さんが感じたこと、私が感じていることを擦り合わせていきます。相手が提案してくれたことに対して、「イメージに合ってる」「こういうキャラクターを入れたい」「それイメージとちょっと違うな」とか。
最終的に対面で4時間くらいディスカッションしました。

唯:いちおう私の作品ではあるけど、あちらの小説家としてのスタイルや良さも取り入れています。【本音】のときは私の中でストーリーがかなり出来上がっていましたが、今回はゼロから作ってくれたのでありがたいです。
登場人物の年齢や生い立ちにも細かい設定があって、相関図も作ってもらったんですよ。

ーーギミックも含め、ひとつの文学作品じゃないですか!

唯:ただ読むだけじゃなくて、読んだあとに何か閃いたり、「あっ!」って驚きを感じてもらえるのが、紙媒体である歌詞カードの醍醐味だと思うので。「読んでよかった」に加えて、「買ってよかったな」と思ってもらいたいんです。仕掛けに気づいたとき、歌詞カードがボロボロになるくらい読み返したくなるはず。
歌詞の部分も、曲に合わせてわざと複雑にしています。そのほうが頑張って読もうってなるだろうし、ゲーム性があっていいんじゃないかなって。

極彩色のアートワークに秘めた想い

ーー今回のアートワークのこだわりを教えてください。

唯:私自身はモノトーンが好きなんですが、今回は【iroha】から“色”をイメージしました。カタログとしての1枚だから、全部に色を付けておきたくて。だから原色を散りばめたものがいいかなと。
インクを花のように垂らした映像や写真があったので、合成に合成を重ねてこういう感じにしました。私が花好きなのもあるし、モチーフとして分かりやすいんじゃないかと思って。
いろんな色が混ざって、バカンと爆発してるようにも見えるでしょ。

ーー歌詞カードの表紙をめくると、ジャケットとは違うグラデーションの花が現れますよね。これにはどんな意図があるんでしょうか。

唯:開けたときに「わっ!」ってなる、視覚的なイベントを毎回取り入れたいんですよ。手に取ってくれた人の「すげー!」って一言を引き出すために。
ただジャケットの裏表紙を寒色にしているのは、私の気持ちでもあります。「大丈夫? 大丈夫かな?」って。花を心臓と考えたら、表はめっちゃカッコつけてるけど、裏では心配しているという。バクバクしている小心者の気持ちを入れています。

ーー歌詞カードだけでなく、CD本体やケースのあちこちにちょっとした隠し要素が仕込まれていますよね。

唯:どこを見ても何かしらハッとしたり、気持ちが揺らいだりするような作品にしたくて。歌詞の一部とか、いろいろ隠して入れています。 けっこう必死に、めっちゃこねくり回して作ったんですよ、このCD(笑)。「グッズとしてのCD」になるよう意識したので。

ーーグッズとしてのCDとは?

唯:最近は「CDプレーヤー持っていないけどCD買いました」ってファンが割といるんです。だからちゃんと目で見て楽しめて、飾っても楽しめるものを作らんとあかんなって。“CD聴いて歌詞見て終わり”じゃなくて、たまに読む本としても楽しんでほしいし、常に持っといて触ってほしい。作るならそういうものにしたいと思って。

唯:私はデザイナーでもあるから、表現するならCDって媒体がいちばん楽しいんですよ。ソロワークスの良さは、アーティストとしてもデザイナーとしてもいろんな挑戦ができるところですね。
7曲で4400円なので、ミニアルバムとしては高いんですが……グッズとして見たとき、買った以上のお得感はあると思います。「高いもの買っただけあるな」って感じてもらえるだろうって自信もある。
それに、いろんな人に携わってもらって作ったから、ちゃんと頂かないと次に繋がらない。その代わり、「これを買ってもらった以上、次も作るよ」という意味も込めています。そういうのが出来るのは、ソロならではですね。

ーーリリース日が毎年4月24日なのは、何か理由があるんでしょうか。

唯:ぶっちゃけると、父の命日なんです。私、記念日を忘れやすくて、人の誕生日も覚えられないんですよ。だけど父の死んだ日くらい覚えとかな、罰当たるなって。その日にリリースしたら、嫌でも覚えるじゃないですか。忘れんようにするって、ボケ防止(笑)。
あとは、父にあんまり恩返ししていなかったから、亡くなった日に音楽を作ることで親孝行できるかなと。だから曲が出来たら、父の写真の横に置いてます。

ーーじゃあ、来年の4月24日も新譜を出す予定ですか?

唯:何かしら作って出します。バンドマンでソロやる人って、短いスパンで活動する人が多いじゃないですか。一瞬だけソロ活動して、またバンドを再結成するとか。私はそうじゃなくて、ソロも並行して行おうと考えています。
だからといってumbrellaをおざなりにすることはまったくないです。umbrellaをメインにやりつつ、私は私で、ちゃんと住み分けできた音楽をやっていこうって思いながら作っています。

ーー主軸はあくまでumbrellaなんですね。

唯:でもひとりの音楽家として、あわよくばチャンスを狙っていますよ。umbrellaの唯だろうが、シンガーソングライターの唯だろうが、良いイベントに誘われたら行く。いい話があれば、喜んで受けます。

ーーでは最後に、【iroha】はファンにとってどのような作品にしてほしいですか?

唯:ベタベタに指紋をつけるくらい、使い古してほしいです。ジャケットが汚れてもいいし、ケースが割れてもいい。大事にとっておいてもらうのも、ありがたいんですけど。でもギターと同じで、CDも年季が入るほど愛着が湧くと思うので。
歌詞カードをケースから外して、寝床にパサっと置いておいて、寝る前に読む。それくらいの雑さがあってほしい。何度も読み返したお気に入りの単行本と同じような存在になってほしいですね。


<Interview & Text:nao kuramoto>

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唯 2nd Mini Album【iroha】
2023年4月24日(月)発売

<収録曲>
01.「ヒカリ」とは
02.戯言
03.切り刻んだ日常
04.ミルクティーフロート
05.シャボン 
06.Bluff
07.熱病

7曲収録
RJUR-003 ¥4,000+税
20Pブックレット仕様(歌詞+各楽曲の短編小説)

<販売>
・路地裏堂Web Store(https://rojiurado.wixsite.com/rojiurado/store)
・ソロ公演時 会場内物販
・umbrella 会場内物販

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information

【umbrella 全国ツアー&周年ワンマン開催決定】
2025年1月〜3月、生誕公演を含む全国ワンマン&主催ツアー開催!
2025/3/14(金)味園ユニバースにて15周年ワンマンライブ開催決定!


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