いとさんが行く!路地裏のアルゼンチン

「いとさん」、大阪の船場言葉で商家の長女を指す言葉です。 ふと思い立って南米アルゼンチンへやって来たいとさんの、どうしようもなく下らない日々を語ります。 地球の裏側より愛を込めて。

いとさんが行く!路地裏のアルゼンチン

「いとさん」、大阪の船場言葉で商家の長女を指す言葉です。 ふと思い立って南米アルゼンチンへやって来たいとさんの、どうしようもなく下らない日々を語ります。 地球の裏側より愛を込めて。

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慌ただしい夏の終わり

こんにちは、いとさんです。 8月の終わり。 それまで私はものすごい緊張感と不安に苛まれた日々を送っておりました。アルゼンチンから日本に外国人が入国する為には様々な手続きが必要でした。入国ビザ、経由地で提示する為のワクチン接種証明、そしてPCR検査。日本語で書かれているはずなのに難解な入国必須条件を読み込んで、スペイン語に訳してアルゼンチンにいるパートナーの彼に伝える。自分の理解が間違っていたら、彼が入国できない事態になってしまうと思うと、何度も何度も間違っていないか確認する

    • いらっしゃい大阪へ

      皆さまご無沙汰しております。 いとさんです。 不安いっぱいでパンデミック中のガラガラの飛行機に乗り、33時間かけてはるばる故郷の島国へ帰ってきてから、早いもので2年が経ちました。アルゼンチンのエセイサ空港で、それまで一緒に暮らしていたパートナーに見送られ、大粒の涙を流しながら独り空港を行くアジア人の私を、職員の方々が皆さん気遣って優しい言葉を掛けて下さったことを今でもよく覚えています。本当に温かい人達ばかりだったなと思います。 さて、今回は唐突ですが、アルゼンチンからパー

      • ありがとうとさようならと

        こんにちは、いとさんです。 9月に入りそろそろアルゼンチンも春を迎える準備を始めたのか、雨が続いています。季節の変わり目に雨はつきものです。しかし雨が降ればまた気温が下がり、爪先からジンジンと冷えてきます。まだ花が咲くような季節は程遠いようです。 アルゼンチンにやってきて一年と三ヶ月が経ちました。元々は一年で日本に帰る予定でしたが、コロナ禍は私にも試練を与えました。私のフライトは航空会社よりキャンセルされ帰国の目処が立たなくなったのです。最初のうちは数ヶ月で事態が好転して

        • アルゼンチンで見たアジア

          こんにちは、いとさんです。 アルゼンチン人の友達が、以前女子会をした時に行った“barrio chio(中華街)“の中華レストランが気に入ったので、あなたを連れて行きたいと言って食事に誘ってくれました。中華街はいつも観光客や地元の人が沢山いて大いに賑わっています。訪れたのはお昼時でしたので、お店は混雑していましたけれど、彼女が事前に予約してくれていたのですぐに席に着くことができました。 周りをそれとなく見回してみましたら、家族連れや私達のように友達同士で来ている人達の他に

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        • Bariloche
          7本

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          Pescaderíaのおじいさん

          こんにちは、いとさんです。 魚屋さんを営んでいる仲良しのおじいさんがいまして、彼が肉ばっかりじゃ飽きただろうと言って、私の為にたくさん魚介類を準備してasadoに招待してくれたことがありました。これには大変感激しまして、その週は日曜日が来るのがとても待ち遠しかったです。 まず最初にparillaに登場したのはVieiras(帆立貝)でした。味付けは塩とレモンのみ。これ以上美味しい食べ方はありません。元々潔さのあるお料理と言いますか、質素な物が好きだった傾向はありますけれど

          小さな隣人が教えてくれること

          こんにちは、いとさんです。 強い雨が降り続いていたある日のこと、知人宅へお邪魔していましたら、その方の飼っている犬がずっとソワソワしているのが気になって、「何かいるのかしら」とそこに居た全員で注意を向けていますと、ふと猫の鳴き声が聞こえたような気がしたのです。もう一度耳を澄ませていますと気のせいではありませんでした。猫がか細く鳴くのが確かに聞こえました。この土砂降りの中、表に猫がいるというのはおかしいねと二人が表に出て様子を見に行きました。暫くして慌ただしく戻ってきた一人の

          小さな隣人が教えてくれること

          通りの番人

          こんにちは、いとさんです。 人通りの多い中心地のcalle(通り)には、決まって手に雑巾をぶらぶら持っている人たちを見かけます。通りを行ったり来たり、はたまたその場に立ち止まって遠くを見つめていたり、何かを待っているかのように見えますけれど、私の目にはとても不審な人に映ります。 彼らはtrapito(トラピート)と呼ばれます。アルゼンチンでは路上駐車が当たり前なのですけれど、彼らは自分たちで縄張りを決めて、路上駐車する人がいればすかさず寄っていき、ここに止めろと場所を指示

          私とアルゼンチンの朝

          こんにちは、いとさんです。 毎朝遅刻すれすれで起床して、まるでゾンビのように意識もないままルーティンになっている身支度を終え、自分の為に随分前に焼かれた冷えたトーストをかじって、僅か15分足らずで家を出る。駅のホームに到着すると同時にやってきた電車に乗り込み、何食わぬ顔をして会社へ出勤する。女子としていかがなものかしらと思える日常を送っておりましたが、これが学生の頃から全く変わりません。母には散々叱られ「はよ寝えへんからや」「やる気の問題や」とよく言われました。しかし困った

          多人種が住まう国

          こんにちは、いとさんです。 アルゼンチンには、その昔ヨーロッパの色んな国から移民がやってきましたが、今でも他の南米の国々からたくさんの人がやって来るそうです。中でもボリビアやパラグアイからやってくる人が多いと聞きます。アルゼンチンは南米の中でも比較的治安が良いことや、誰でも公共の医療機関を無料で受診できたり、移民に対して寛大な姿勢であることが主な理由と考えられます。 ボリビアからやってきた人は、verdulería(八百屋)を営んでいることが多く、街中で八百屋を覗けば褐色

          当たり前の中で見つけるもの

          こんにちは、いとさんです。 しばしばアルゼンチンでは、日本で暮らしていた時のようにスムーズに物事が進まないことがあります。電車に乗るにもバスに乗るにも、日本と同じようにICカードをかざして料金を払いますのでシステムは近代的です。高速道路を利用する時も車に搭載したチップが車体を認識して後日一括で料金の請求がきます。ETCと同じです。同じように近代技術が生活の中にあるはずなのに、全く不便だなぁと感じるが多いのです。 日本を知るアルゼンチンの友人は、「日本の店員はチップで稼ぐわ

          お料理の哲学

          こんにちは、いとさんです。 日本で使われる調味料は、アルゼンチンでは手に入りにくい上に高価ですので、必然的に献立を変えるようになりました。当たり前にできると思っていた料理は、日本の数多くの調味料に助けられていたということにこちらに来てから気づきます。味噌や醤油、みりんなどの日本食に欠かせないスター選手達を使わずに、どれだけ自分の胃袋と舌を満たすことができるか。実家ではほとんど家事をしてこなかったので、あまり知恵がなく毎日試行錯誤しています。 アルゼンチンのスーパーに並んで

          言葉を育てられている感覚

          こんにちは、いとさんです。 アルゼンチンのドラマを観ていましたら、面白いことが起きました。ドラマの登場人物達がセリフなしで手と目だけで話しているのです。「食べて祈って恋をして」という映画の中で、「イタリア人は手でも話す」と言っていましたけれどアルゼンチン人もその傾向があります。実際にドラマの中で繰り広げられていたジェスチャーは、アルゼンチン初心者の私でも何を言っているのか理解できるほどポピュラーなものでした。 アルゼンチンが大好きな彼のYouTubeでは、アルゼンチンでよ

          心と荷物の整理

          こんにちは、いとさんです。 アルゼンチンへやって来た時は、スーツケース二つとリュック一つ、貴重品を入れたウエストバッグ一つを持ってきました。多いか少ないかは分かりません。一年間だけアルゼンチンに住むためにあまり多くのモノは必要ないと思い、渡航までに色々と整理したのですけれど、改めて私の持ち物は大したものがないことに気付かされました。 自分の部屋の中をひっくり返して見てみたところ、私は本と服しか持っていませんでした。本はざっと見渡して旅と食に関するものが多く、大阪の地に腰を

          内と外の境界線

          こんにちは、いとさんです。 アルゼンチンに来て気づいたのですけれど、私はどうも床に座る習性があったみたいです。誤解を招くといけませんので先に申し上げますと、パブリックの場でいきなりしゃがみ込んで寛ぐということではありません。アルゼンチンでは主にソファーで寛いで過ごしていましたが、少し前に新調したカーペットにぺたんと座り込んでみると久しく感じていなかった一種の安らぎのようなものを覚え、少し癖になっています。 実家の食卓は元々嵩の低かったテーブルの脚をわざわざ長いものに付け替

          野菜をめぐる話

          こんにちは、いとさんです。 こちらへ来てからほぼ毎日お肉を食べる生活をしています。渡亜後、半年も経たずに体重が6kg増加しましたので、この先も増え続けたらと考えてぞっとしたことを覚えています。食生活にはあまり気を使っていませんけれど、慣れ親しんだ家庭の味には必ず野菜がありましたので、事あるごとに野菜が食べたくなります。 アルゼンチンの野菜は日本で買うよりも安く手に入ります。しかし、不格好なものに出会うことが多いのです。日本のスーパーでも時々面白い形に成長した野菜を見かけま

          いとさんのアルゼンチンプレイリスト

          こんにちは、いとさんです。 アルゼンチンと言えばタンゴが有名です。力強さの中に哀愁を漂わせるアルゼンチンタンゴは、アルゼンチンが辿ってきた歴史もタンゴが生まれた背景も何も知らない素人の私が聴いても心を揺さぶられるものがあります。目の前にあるのに掴めない何かに悔しさを募らせたり、もどかしく感じる時の感覚や、愛してはいけない誰かに心を費やしている様子を私に思い起こさせるメロディです。聴く人によって感じ方が違うのが音楽の良いところですから、まだタンゴを知らない方は、私の感想に惑わ

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