地球の裏側で生まれ変わる

はじめまして。いとさんです。

「いとさん」とは、大阪の船場言葉で商家の長女を指します。スイスイとネットサーフィンをしておりますと、その語源が「愛しい人」から来ているらしいということを見つけました。

下に生まれた妹は「小さい方のいとさん」ということで、「こいさん」と呼ばれるそうな。大正〜昭和初期の大阪の商家の暮らしを描いた谷崎潤一郎の「細雪」でも四番目の娘がみんなから「こいさん」と呼ばれています。

しかし、これらは今日の大阪ではあまり聴き馴染みがありません。まして、私は商家の生まれでもありませんので「いとさん」と呼ばれる立場ではないのです。(三姉妹の長女ではありますが。)

ご縁があって日本から遠く離れたアルゼンチンへやって来ましたら、自分が何者でもない取るにたらない存在であることを痛感することとなりました。自分を知る者は一人もおらず、これまで積み上げてきた自分のキャリアや常識は通用せず、尤も言葉も通じません。

少し寂しく感じる一方で、物凄く身軽になったように思える自分もいました。大袈裟ですけど、生まれ変わったような感覚になったのです。目にするもの全てが新鮮に思えた子供の頃のように、ただただ知識に貪欲に生きるあの感覚が自分の中でまた息を吹き返したようです。

そういうわけですから、自分は一体何者かと改めて考えてみると私には「大阪生まれの三姉妹の長女」という肩書だけしか残りませんでした。生きるのにひとつも役に立たない肩書きですけれど、私に今誇りがあるものといえばそれくらいしかないのです。

私の脳に搭載されているCPUは時々いい加減な仕事をしますので、色々思考した末に「いとさん」が結局単に気に入ってしまったということから、こちらでそのように自己紹介させて頂くに至ったというわけです。

どうぞご贔屓によろしくお頼み申し上げます。

いい加減なCPUと共に、脳内メモリーもまた難儀でして、貯蓄されてる内容がしっちゃかめっちゃかであることもしばしば。そこでアルゼンチンで見聞きしたことをここへ少しずつ綴っていき、思い出と記憶の補填をしようと思った次第です。

「生まれ変わったような感覚がした」と大袈裟な言い方をしましたが、こちらでも何か事あるごとに私は大袈裟に物を言うようでして、アルゼンチン人にも「大袈裟な!」と笑われます。

そういう時、彼らは”Que exagerada!!”と私に言います。

子供が言葉を覚えるように、ポロポロ私の上に降ってくる単語を拾っては使って少しずつ体に染み込ませて言語を学んでおりますので、他の方のように上手にスペイン語を人に教えることはできませんが、このように日頃使っている言葉をご披露することはできるかと存じますので、何処かでだれかの役に立つことを願います。

いとさん


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