バイオ系若手研究者のキャリアプランについて考える (地獄のアカデミアに残るか?去るか?新しい道を開拓するか?)
こんにちは。ロジーさんです。今回の記事では、表題の通り、「バイオ系研究者のキャリアプランについて考える」というテーマでつらつらと僕の経験を踏まえ、平成後期〜令和の「地獄のアカデミア時代」においてバイオ系の若手研究者がどうサバイヴして行けば良いのか?に関して書いていきます。なお、この記事ではバイオ系研究者とは主に生命科学・基礎医学・薬学・生態環境学・農学・獣医学等において博士を取られた方もしくは取得見込み(or目指している)の方、と広く定義します。”若手”は文科の基準よろしく40歳未満とします。
・概論
まず、概論から。昨今の日本では、歯止めの効かない少子高齢化や、主に財務省の方針によって増税・消極財政政策(社会保険以外)が展開されているのは周知の事実ではありますが、国内の教育や研究を総括する文部科学省もその煽りを受けており、小渕内閣・有馬文部大臣時代(1998-1999)の頃に法人化が決定された国公立大学の運営費交付金の総額は、毎年▲1%程度と減らされ続けています。
またそれとは別に、私立大学などを政府が支援する私学助成金に関しても平成後期からずっと停滞状態が続いており、度重なる増税(特に消費税は事務経費や研究費にも直撃します)、増大し続ける実験試薬・機器代や論文購読・投稿料(日本以外の欧米・アジア各国はインフレし続けているのです!!)のために、ちっとも増えない政府からの補助金と増大し続ける経営費はもはや全国の大学や国研(まとめていわゆるアカデミア)にとって”泣きっ面に蜂”状態となっているのです。
さらに残念なこととして、2013年に改正された労働契約法では有期契約被雇用者(以下、任期付きと呼びます)は5年もしくは10年間勤続した場合は定年制雇用に転換しなければならない、と定めたのですが、残念なことに国内アカデミアのほぼ全ての研究機関においてはこの改正法を”逆解釈”し、「任期付きは最大10年で雇い止め」というルールを作ってしまったのです。現在、理研(以下の記事を参照)や東北大で大問題となっている事が報道されてしまっていますが、これは日本全国で続々と起きていることであり、槍玉に上がっている機関だけではない、ということをここに明記しておきます。
ということで、冒頭で述べた「地獄のアカデミア時代」とは、運営費・補助金の減少・停滞によって、「ポストについても薄給」「増税と健康保険・年金負担額の増大でそもそもの暮らしが厳しい」「公募ポストも任期付きがほとんど」「任期付きだと最大でも10年で追い出される」「定年制のポストはほとんど公募されない」という状況を端的に述べたものになります。この状況は、大学法人化及び研究者の任期付き雇用を推し進めた有馬元文部大臣にも予想できなかった事であった、と本人へのインタビュー記事では述懐されていますが(下記)、今を生きる我々当事者にとってはもはや、”本人の後悔”で済む問題ではないでしょう。少しラジカルな言い方になってしまいましたが、死人に口無し、ということでこの辺りにしておきます。
・どうサバイヴするか?
この記事の本題です。概論ではこの国、日本の悲しい現状と悲観的な展望をさらっと紹介しましたが、我々は今を生きなければいけません。つまり、足を止めてしまったら地獄に嵌まってそのまま死ぬのです。将来について特に何も考えず、大学学部→大学院→そのままアカデミックポストとして研究に打ち込めば安泰だった時代は終焉してしまったのです。よって、過ぎ去ってしまった古き良き時代は決して顧みず、今のこの地獄の時代をどう生き抜いて、バイオ系研究を継続していくのか、もしくは他の道を探すのか。ということに関して、いくつか僕の考えが及ぶ範囲で羅列していきます。
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