『本物をまなぶ学校 自由学園』を読んで

10ヘクタールの自然豊かなキャンパスを有する自由学園。ちなみに、1ヘクタールは、およそ 25mプール 36個分で、甲子園球場の広さは、およそ 3.85 ヘクタール。

ある先生は、個人面談でキャンパス内を生徒と共に歩くという。誰もいない放課後の教室で向き合うのではなく、元気のない生徒がいたら、広いキャンパスをゆっくりと並んで何周でも歩く。空に伸びる木々を見つめ、やわらかい風に吹かれるうちに、心を開いてぽつりぽつりと胸の奥にあるものを言葉にするのだという。自分と同じ歩調で歩いてくれる人のいる心強さと安心感。似たような場面は、生徒同士の間でも日々紡ぎ出されている。だから、自由学園には、包みこむような空気が流れているのかもしれない。

「はじめに」より引用

もう、すてきな場所に間違いない。そう思いながら読み進める。

この学校の創立者たちはこう考えていたという。学校は今ある社会の模倣ではない。そこに人材を送り込むためのものでもない。学校は今ない社会をつくる人たちを育てるのだ、と。

木々と光の美しい 3万坪の校庭 p.22 

お金のないアロからすると、自由学園の学費は「高い」と感じるが、今ない社会をつくる人を育てるための教育に、それほどのお金を投資することは確かに大切である。

「学校は置き換え可能な人材をつくり出す場ではなく、一人ひとりを大切にし、新しい社会へのビジョンを持った人が育つ場でありたいという信念です。ですから、学校は、今の社会を模倣していてはダメなんです。今は教育現場にグローバル競争に打ち勝つ人材育成が求められていますが、この学校は人材育成ではなく、どんな時代どんな社会にあっても、自分の人生を自分らしく歩み、そしてよい社会とは何かと自分の頭で考え、これをつくっていく人が育つことを願っています」

高橋和也学園長の2016年就任時の言葉 p.28

自由学園では、野菜の栽培やそれらを使った食事づくり、行事の企画運営、校則づくり、清掃など「自治」が尊重されているそうだ。寮長を務めた女子生徒の言葉は深い。

「(前略)食事作りも掃除も、自分でやった方が早い。でも待ってなきゃ、その子が成長しない。だから寮長のときは、自分の時間がないくらい大変でした」

自分で考える、生活に学ぶ p.31

最高学部の男子学生の言葉も力強い。

僕はものに触れなければ、ものの本質を知ることはできないと思うんです。専門的な方向を極めることも大切だけど、全員が全員そうである必要はない。まずは、いろいろなことを知っている人間でありたい。勉強は大好きなので、引き出しを開けたり閉めたりしながら、やれる仕事を見つけていきたい。

自分で考える、生活に学ぶ p.32

男子部教諭の方の言葉で「熟議」という言葉を知った。

熟議は、立場や価値観の異なる双方が、対立ではなく対話をもって相互理解に努める議論の手法の一つです。社会にはいろんな人がいて、考えも違う。立場や価値観の異なる他者を批判することは、互いに傷つけあうことでしかない。私たちが目指すのは、誰もが自分らしく生きられる社会。傷や苦しみ、またヘイトの言葉の奥にあるその人の経験、思考、感情を探り、自分に照らし合わせながら、互いに新しい視点を知り、理解を深めていく。私たちは、『違うからこそつながる』ことを大切にしたいのです。

自分で考える、生活に学ぶ p.35

そして、「教育」という言葉も知った。

羽仁もと子が、"教育は交わりである。おとなが子どもを教えるのではなく、共に交わりつつ相互に教育される"と書いている。丁寧に交わること。私は、交わりの中で互いの裡に秘められている潜在的なものが顕在化していく過程を"教育"という言葉で捉えたいんです。

自分で考える、生活に学ぶ p.36

自由学園では、生徒たち自身で自分たち(教員も含む)の食事をつくるそうだ。以前、シェアハウスでみんなで朝食や夕食を囲んだ経験のあるアロからすると、この体験ができる学校は憧れる。

(前略)ここで学ぶことは、そんなとき、相手の立場になること。長い目で見てあげること。そして失敗しても許され、取り戻す機会はいくらでもあるということ。台所は、人としての愛情を育む場でもあるのです」

食堂が真ん中にある学校 p.60

上述のシェアハウスでお世話になり、親炙しているK.Omuroさんは「ご飯の美味しさに関係なく、親が台所に立っていること自体が愛だ」と言っていたのを思い出した。

今、80ページ目に差し掛かったところ。興味をもたれた方はぜひ、一読してみてほしい。ここ(自由学園)で学べなかったなら、子どもをここで学ばせたいけどできないなら、それらを言い訳にせず、つくろう。同じでなくていい。今の教育に疑問があるのなら、できる範囲で、仲間と協力しながら場づくりをする。

アロも、大学卒業後は農家になり、大学生を中心に共同生活ができる場をつくり、互いが互いから学べる場を創ります!

今日も
あなたと私と世界が幸せでありますように。
あなたと私と世界が穏やかでありますように。
あなたと私と世界が健康でありますように。
あなたと私と世界が安らかに暮らせますように。

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