荷主の協力得て長時間労働防止を|気ままに労働雑感
厚生労働省はさきごろ、令和5年に全国の労働基準監督署が自動車運転者を使用する事業場に対して実施した監督指導の結果を取りまとめました。
それによると、何らかの労働基準関係法令違反がみつかったトラック運送事業場が8割に達しています。とくに、36協定で定めた限度を超えて時間外・休日労働に従事させるなど、労働時間に関する違反率が48%とめだちました。
改善基準告示違反も少なくなく、主なものでは、最大拘束時間(1日当たりの拘束時間)が違反率43%、総拘束時間(1カ月当たりの拘束時間)が33%に上ります。
違法な長時間労働がみられる要因の1つには、恒常的な荷待ちの発生が挙げられます。
今年4月からスタートした自動車運転業務における時間外労働の上限規制を遵守するためには、特定の運転者に業務を集中させない体制・仕組みづくりや、荷待ち時間の削減に向けた荷主への働きかけ・協力要請が大切になるでしょう。
労基署による監督指導では、長距離輸送を行う運転者10人に対し、36協定で定めた限度(月90時間)を超える月最大152時間の違法な長時間労働を行わせていることを確認し、是正勧告したケースがありました。最大拘束時間や総拘束時間、休息時間などの違反もみつかったため、改善基準告示違反でも是正勧告を行っています。
是正勧告を受けた会社は、各運転者について、月の途中の労働に基づき、1カ月当たりの時間外・休日労働時間数を推計し、1カ月当たり80時間を超える恐れのある者の業務を他の労働者に割り振るといった業務量の調整を実施し、特定の運転者に業務が集中しないよう平準化を図りました。
さらに荷主に対しても長時間の荷待ちが生じないよう協力を求め、荷主側の荷役作業員を増員してもらうとともに、遠方への運搬時に優先的に荷積みが行われるよう配慮してもらいました。それらの対応の結果、同社では時間外労働を月80時間以下に減らし、総拘束時間も改善基準告示が定める293時間以内(当時)に抑えることができました。
長時間労働を放置すれば、脳・心臓疾患などの健康障害の発生にもつながりかねません。多発するトラック運転者の過労死を防止するためにも、トラック事業者と荷主の協力によって、対策が進むことを期待しています。
労働新聞編集長
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